2
新次郎は、あかねの持ってきてくれた朝飯を食ってから腰を上げると、
夜着を
大刀のみを腰にぶち込んで、土間に降りた。
脇差(小刀)は、押し入れに入れたまま、しばらく差していなかった。
そして、顎を指先で撫でてみて、無精
(ふむ、まあ、いいかの)
新次郎は元来、髭の薄い方で、三日に一度剃れば十分だった。
障子を開けて外に出た新次郎の目に、陽光が染みた。
「おやおや、今からお仕事かい?」
井戸端の方から声をかけてきたのは、長屋の女房連だった。
「ああ、おはようござるな」
「ござるな、じゃないよ、先生。もう、ここの男連中は、
みんな仕事に出ちゃってるよ」
そう言って笑うカミさんたちの表情は、みな暖かかった。
浪人して、ここに転がり込んできて半年、新次郎はこの長屋の女たちには
好かれているようだった。
女性、特にこのような町人の女たちとの会話に慣れていない新次郎は、
ペコリと頭を下げて、長屋の向かいの、あかねの家に向かった。
「おはようござる、
と、家の中から、
「おう、先生かい? おられるとも、
野太い声がした。
障子を開けると、初老の男が、
あかねの父、吉蔵である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます