第34話

 秋葉原のダンジョンから去った僕達はギルドの本部に今日あったことを報告した。とりあえず問題になっていたモンスターは討伐したのでそれについては一件落着と言ったところだ。


「皆本当にお疲れ様だった。未知の敵相手に冷静に対処してくれて感謝する」


 ギルドの報告から戻ってきた岩代さんが僕達へ労いの言葉をかける。


「本当にあのモンスターはなんだったんでしょうね」


 出雲さんが顔をしかめながら呟く。彼女にとってあのモンスターはあまり思い出したくはないもののようだ。


「なんというかとても不気味であの見た目を見た時、本当に生き物なのかと思ってしまいましたよ」


「それは……確かに」


 出雲さんの言葉に僕は頷く。確かにあの見た目はとても自然発生の生き物には見えなかった。なんというか誰かが生み出したと言われたほうがすっきりするかもしれない。だとしても相当嫌な外見だけど。


「まあとりあえず懸念になっていた厄介なモンスターを取り除けたってことでいいんじゃない? これからあいつがなんなのかは調べていく必要があると私も思うけど今ここで思い悩んだって仕方ないじゃん」


 重くなった空気を不知火さんが振り払う。彼女の言うことは正しい、今は情報も少ないし、あいつを倒せたということで良かったと考えるしかないのだろう。


「そうですね、不知火さんの言う通りです」


「ねっ、そうでしょ。だからこの話はもうおしまい、今日は皆帰って休んで次の探索への鋭気を養うとかしましょう」


「不知火の言う通りだ。今日は皆もう家に帰って休んだほうがいい」


「それじゃ私はここの部屋に戻ります。ゆっくりお風呂でも入って寝るとしますよ」


 出雲さんがひらひらと手を振りながら、ギルド本部にある自分の部屋へと戻っていく。


「待ってよ、梓~。あたしも部屋に戻るから置いていかないで~。あ、隠岐くんも和泉さんも帰りは気をつけてね!」


 不知火さんがわざとらしい声をあげて出雲さんの後を追っていった。


「俺も戻るとするか。二人は一緒に帰るんだろう?」


「はい、和泉さん一人で帰らせるわけにはいきませんから」


「なら彼女のことを頼むぞ。隠岐くん、今日はいい戦いぶりだった。不知火との連携も見事だったぞ」


「いえ、不知火さんが僕に合わせてくれてただけですよ」


「謙遜するな、あいつは戦いの時まで他人に合わせるような性格じゃないさ。それは君がよく分かってるだろ。もっと誇っていい、それじゃ気をつけて帰れよ」


 岩代さんが僕と和泉さんに手を振って去っていく。岩代さんや不知火さんと肩を並べて戦えたことは確かにいい経験で自分に少し自身を持てた


「それじゃ僕達も帰ろうか」


「うん、一緒に帰ってくれてありがとう」


 ぼんやりとした不安を抱きながら僕と和泉さんは帰路についた。

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