第33話
ーー天の双剣のパーティが去った後の秋葉原のダンジョン。
「ふむ、やはりまだまだ力が足りていなかったか」
彼ら戦っていた場所に人影が一人、彼は天の双剣が倒した例の怪物が焼き払われた場所までくると膝をつく。
「あるいはあの者達が強かったかのいずれかだが」
地面を軽く撫でる。彼はそっと目をつぶった。
「なあに、祈りでも捧げてるの?」
かけられた声に彼は振り返る。そこには小柄な女性が立っていた。神経を逆なでするようなしゃべりと声質に彼は不快感を覚えた。
「君か」
「そんな姿似合わないわよ、あんたには。見ていて滑稽で笑えるわ」
彼女は彼の側まで歩いてくると怪物が焼き払われた場所を見つめる。
「しかしよくこんな怪物を作り出せたわね、あなたの執念の賜かしら。いずれにしても普通の人にとっては不快なものでしょうね」
「そんなことは分かっているさ。ただ私にはこの道しかなかっただけだ」
「……まあ、いいわ。で、あなたの計画とやらは進んでいるのかしら? 私は正直あなたの計画に強力したら面白そうだったから一緒に行動してるの。あまり待たせるようならあなたのことを見捨てるわよ」
「焦らなくてもお前が楽しめるような舞台は用意するさ。ただ楽しい舞台には相応の準備が必要だろう」
「……まあそうね」
小柄な女性は彼の意見に同意する。
「だけどいつまでも待つことは出来ないわよ。私も気の長いほうじゃないからね」
「知っているとも。だから君が好みそうなショーをもうすぐ行うことにした」
「ショー? へえ」
男の言葉を聞いた女性はにやりと口角をあげて笑う。どうやら男の言うショーとやらに興味を持ったらしい。
「それは楽しみね。私好みのショーって言うなら期待しちゃうわ」
男の言葉を聞いた女性はとても愉しそうだった。
「ああ、楽しみにしていてくれ。しかし、さっきこいつを倒した奴らだが」
「ああ、なかなかの強さよね。なんだかんだ言ってあなたのペットを倒しちゃうんだから。あのペットも結構強かったはずだけど」
「そうだ、こいつは他のモンスターを喰らい、強くなっていた。それこそ並の探索者は簡単に倒せるくらいにな。確か天の双剣だったか、あそこにいる不知火 楓は有名人だが他のメンバーにも警戒しておこう。それにあの剣を使っていた無名の少年……彼は面白いと私は思ったが君はどう思う」
男が女性に尋ねると彼女はこくりと頷いた。
「同感。見た感じ彼のスキルはちょっと特殊そうなのよね。そこに関してもこれから楽しめそう。あなたについて来てやっと楽しめそうな要素が出てきたわ」
「さてそろそろ次の実験に移るとしよう。被検体は誰にしようか……やはり実験について考えている時は一番愉しいよ」
男と女は互いに不気味な笑いを浮かべ、ダンジョンから消えた。
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