第16話

 隠岐くんが綺麗な女の子と一緒にいるとある日、私ーー和泉神楽の耳に入ってきた。

 なんでも凄く可愛い女の子らしい。実際に見た人によると放課後、ずっと隠岐くんのことを待っていて彼と合流した後、どこかへ行ったんだとか。それと同時に隠岐くんが謎の欠席となったんだけど。

 別に彼がどんな女性と付き合おうと自由、私がなにか言える立場じゃない。彼とはあくまで友人で仮にその謎の美少女と隠岐くんが付き合っていたとしても私が止めたりする権利はないのだ。


 だけどなぜだろう、彼が他の女性と付き合っているのを想像するとなぜかいい気分がしなかった。なにか別のことをしても隠岐くんがその女性と付き合っているかとか彼も私みたいに地味で暗い私みたいな人間よりも明るい異性のほうがいいのかななどと想像して嫌な気持ちになってしまう自分がいたのだ。そのせいで学校の授業も身が入らなかった。


 一体私はどうしてしまったのだろう?


 そんなふうに悶々とした日々を過ごしていたある日、急いで学校から帰ろうとしている隠岐くんを見つけた。なんだろう、いつもはそんなに急いだりしていないのに今日はやけに焦っているな。

 気になった私は彼を呼び止めてどこに行くのかと尋ねた。彼曰く、今日は人と会う約束があるらしい。その人ってもしかしてこの前会っていたと噂になっていた女性かな?

 なんか……彼とその女性が会っていることを考えたら凄く苛ついてきた。

 私は自分がなぜ苛立っているかが分からないまま、隠岐くんを質問責めにした。ああ、こんなことをしたら彼を困らせてしまうのは分かっているのになぜか止められなかった。

 隠岐くんは最初は話すのを渋っていたけど、ついに折れて事情を説明してくれた。なんでも噂になっていた女性はギルドの人で彼女はあの秋葉原での騒動における隠岐くんの戦いを見てギルドに入って探索者にならないかと声をかけてきたらしい。隠岐くんはそれを了承し、今日はそのための説明を受けに行くそうだ。

 彼曰く、その女の人は彼女ではないとのこと。まあ彼がこんなことで嘘をつくとは思えないし、そもそも器用に嘘をつける人間ではないだろうけど。

 でもなんだろう、その人と隠岐くんを二人を一緒にするのは凄く危険な気がした。

 だから私は今日の隠岐くんのギルド行きに同行することにした。決して彼が他の女と一緒にいるのが嫌だったからではない、友人として変な女にたぶらかされるのを防ぐためだ。なぜかその相手ーー不知火さんと言うらしいーーは私が同行していいか隠岐くんが確認をとったところ私のスキルを教えて欲しいと言ってきたらしい。あまりスキルのことを他人に話すものではないだろうけど、相手はギルドの人間なら問題ないだろう。完全に信頼は出来ないけど。私は隠岐くんが話してくれた条件に同意し、彼と一緒にギルド本部に行くことになった。


 私が不機嫌なせいで隠岐くんはかなり困惑してしまっていた。ごめんね、困らせたいわけじゃなかったんだけどな。後で謝ろう。まあとにかく彼が変な女にたぶらかされないように私がしっかりして彼を変な虫から守らないと!今回の同行は友人として彼を見守るもので私利私欲では決してない!

 私は自分にそう言い聞かせて隠岐くんと一緒にギルド本部へ向かった。 

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