第9話
「よし、それじゃ僕のスキルの検証を始めようか」
昨日の一件から一夜明けて。充分な睡眠を取った僕は寝る前に考えていた自分のスキルでなにが出来るか把握するためにいろいろ試してみることにした。家に誰もいないのが好都合だった。
「まずは魔剣を出してみるか」
とは言ってもどうやって出せばいいんだ? 昨日の戦いが終わった後は自然に消えていたけど。
「まさかもう出せないなんてことはないだろうな……」
そうだとしたら最悪過ぎる。
「そのようなことはありません。あなたが念じれば魔剣はすぐにあなたの手元に現れます」
「うわっ」
僕が困っているとアナウンスの声が頭に響く。いきなり出てくるとやっぱりまだびっくりするなあ、これにも早くなれていかないと。
「ただ念じるだけでいいのか……」
「はい、魔剣はあなたの意思で顕現させることができます」
あの魔剣見た感じ武器としても相当いいものに見えたんだけどな、サイクロプスの腕を簡単に斬り落とせたし。そんなものが念じるだけで出し入れ可能とは。ダンジョンに潜ってレア武器やアイテムを日々探している探索者にとってはこの機能が収納する道具にあれば喉から手が出るほど欲しい機能のような気がする……。
アナウンスの声に従って僕は目を瞑り意識を集中する。
「顕現せよ」
僕の言葉と共に右手に魔剣が現れた。
「ほんとに出てきた……」
少しあっけにとられたけど、こんなに簡単に魔剣を出し入れ出来るのはありがたい。置く場所に困らないからな、こんなものを部屋にずっと置くわけにはいかないし。
「よし、一つ問題が解決した。で、次なんだけど」
これが今日一番気になってることと言っても過言じゃない。
「なあ、昨日言ってたポイントってなんだ?」
僕はアナウンスに尋ねる、これは今日絶対確認したいことだった。
「ポイントはモンスターと戦って倒した時に貯まるものです。ポイントを消費することによって魔剣があなたに新しい力を与えます」
「力っていうのはこの前の身体強化みたいなやつって認識でいいのかな」
「はい、間違いありません。昨日獲得した500ポイントを使ってあなたは追加の効果や技を手に入れることが出来ます」
なるほど、RPGのゲームで獲得したポイントを使って能力や技を手に入れていく感じだな。なんとなく理解した。
「基本的なところはある程度理解出来たんだけど獲得できる追加効果や技はどんなものがあるんだ?」
「こちらが獲得可能な効果や技の一覧です」
アナウンスの言葉と共に僕の目の前にSF映画とかでよく見る立体映像のウインドウみたいなものが僕の目の前に出現する。この前も見たけどちょっとびっくりするよなあ。
「なんかいろいろ書いてある」
ウインドウにはたくさんの言葉が書いてあり、その横に数字が書いてあった。おそらくこれが効果を手に入れるために消費するポイントだろう。なんというかゲームでキャラクターに能力を付与する時のステータス画面みたいだ。
「それにしても手に入れられる効果や技ってこれだけあるのか」
僕は表示された効果を確認していく。しかし数が多くてすぐにすべてを確認するのは無理そうだ。
「でもいろいろと効果の組み合わせとか考えてみるの楽しそうだな」
僕は表示されている効果や技をすべて把握しようと片っ端から確認することを始めた。こういうのはゲーム好きの性なのか楽しく感じてしまう。
気がつけばその作業にのめり込んでしまい、相性の良さそうな効果の組み合わせをスマホのメモ機能で書き出して検討し始めていた。
「よし……この効果とこの効果は……駄目だ、あまり噛み合っていない。これとこれはいけそうだな」
ああ、駄目だ、こういう組み合わせを考えるの楽し過ぎる!
「そろそろお決まりですか」
テンションが高くなった僕にアナウンスが突っ込みを入れてきた。いけない楽しくて我を忘れていた。
「あー、ごめん。組み合わせを考えるのが楽しくてつい……んー……」
とりあえず追加で手に入れたら面白そうな効果や組み合わせは何通りか候補が出来た。しかし、
(やっぱり自分にはまだ実戦や経験が足りていない……)
まだスキルに目覚めたばかりでどういう効果がいいかを判断する実戦や経験が足りていない。この前みたいなことは早々起きないだろうけど戦っている時に必要なものが出てくるかもしれない。
(とりあえず今は困ってないからポイントは貯めておこう。本当に必要な時に使うべきだな)
「ごめん、あれだけ組み合わせ考えておいて悪いけど今日はポイントは使わないでおくよ。本当に困った時に使うようにしたいんだ」
「分かりました」
アナウンスはそれっきり沈黙してしまう。付き合わせてしまって悪かったなあ。
「まあ冷静に考えて今の僕にはこの貯まったポイントを使うことになる場面ってないんだけどね」
スキルに目覚めたと言っても今の僕はただの高校生だ。この力を使う場面は今のところはない。
「……一つ役立ちそうな役割はあるんだけど」
僕にはある選択肢が浮かんでいたけどすぐに頭から消す。その選択肢はあくまで憧れだからだ。
「スキルについてもう少し考えたら今日はゆっくり過ごそう」
嫌な学校前の休日はこうして時間が過ぎて行った。
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