第8話

 ーー時間は少し遡って隠岐 遥がサイクロプスと戦闘している時に戻る。


「うわっ、ダンジョンの入り口からもうモンスターが溢れてきてるじゃん」


 一人の少女がモンスターが溢れた秋葉原に降り立つ。綺麗な茶髪をポニーテールにしていて少し幼さの残る顔立ちだが意思の強い目をしている。街を歩いていて見かけたら誰もが可愛い美少女として振り返るレベルだろう。

 服装は上はシンプルなシャツに黒いパーカーを羽織り、下は動きやすそうなショートパンツを着ていて動きやすそうな服装だ。全体的にその少女からは活発な印象を受ける。

 そんな少女の周囲にはモンスターが集まってきていた。


「うわっ、もう集まってきた。あんた達、あたしが来たことを察知するのは早いねえ」


「そりゃモンスターにとって人間っていい餌ですもん、あなたを餌に見えてるんだからすぐに寄ってくるでしょうね」


 少女が耳に付けた骨伝導型のイヤホンからもう一人の声が聞こえる。少し低めの女性の声だ、イヤホン越しに喋る彼女は心底気怠そうにもう一人の少女に告げた。


「さっさと終わらせてください。私は早く部屋に引きこもりたいんです」


「あんたはいっつも引きこもってるでしょうが、ほんとたまにはやる気出しなさいよ、この引きこもりのニート」


「ニートではありません、一応こうやってモンスター討伐に強力するという社会貢献をしていますから」


「屁理屈を捏ねるのだけはうまいわね、あんた」


「とか話してる間にモンスターがあなたに迫ってますよ」


「お?」


 イヤホンから聞こえる声に茶髪の少女が周りを確認するとモンスターの一体が今まさに彼女に襲いかかってきていた。


「あっちゃー、うっかりしちゃったよ」


 言葉とは裏腹に少女が焦っているようには見えない。彼女に襲いかかった狼のようなモンスターが鋭い牙を彼女の柔らかい肉に突き立てようとしてーー。


 次の瞬間には狼のようなモンスターは吹き飛んでいった。ビルの壁に激突したモンスターはその衝撃で絶命する。


「ざーんねんでした。惜しかったね、でもそれじゃあたしには届かないぞ」


 茶髪の少女はその光景を見て楽しんでいるような発現をする。モンスターと戦うことにあまり恐怖を感じていないようだ。


「さて、残ったモンスターは・・・・・・あー、3体かあ。それじゃこんなもんかな」


 彼女が片腕を前に突き出すと少女を襲おうとしていたモンスターが全員その場から吹き飛んだ。モンスター達は吹き飛ばされて建物の壁に激突する。その衝撃ですべてのモンスターは絶命していた。


「よし、ここは終わり。ねえ、まだモンスターがいるところを教えて」


「はいはい。ちょっと待ってくださいよ、む・・・・・・これは」


 イヤホン越しの気怠そうな少女の声音が変わる。なにか気になるものを見つけたらしい。


「どうしたの? なにか変わったことでも見つけた?」


「いえ、Aランクのサイクロプスが出現したモンスター達から離れて一体だけいるのを見つけまして。誰かが交戦しているみたいですね」


「へえ・・・・・・」


 茶髪の少女は面白そうに気怠げな声の少女の話を聞いている、興味を引かれたらしい。


「面白そうじゃない、あたしそっちに向かうわ。その場所を教えて」


「ちょ・・・・・・ああ、もうまた勝手に行動して! リーダーに怒られたらどうするんです・・・・・・はあ、場所をスマホに送ります」


 茶髪の少女はイヤホン越しの声の抗議を無視して行動する。彼女は送られてきたマップの場所に急いで向かった。


 そこで見たのは一人の少年が1つ目の巨人と戦っている光景だった。少年が剣を振るってサイクロプスと戦っていて彼が相手を圧倒していた。


「・・・・・・やるじゃん、あの子」


 茶髪の少女は感嘆したように言葉を漏らす。Aランクのモンスターを圧倒できる人間なんてそんなに多くはない。


「ねえ、あの少年は一体何者なの?」


 茶髪の少女はスマホのカメラで少年とサイクロプスの戦いを撮影し、イヤホン越しに会話している少女に送る。


「調べましたけど探索者ではないようです。登録には出てきません」


「嘘でしょ、あれだけの使い手で登録がないですって・・・・・・あ、戦闘が終わった」


 彼女達が会話をしている間に少年と1つ目の怪物の戦いは終わってしまっていた、モンスターを倒した後、その場から少年は素早く去ってしまう。


(動きも速いわね、いずれにしてもあれだけの力を持った人間が探索者としても登録されていないのなら)


「これはチャンスかもしれないわ」


「え? なにかいいました」


「ねえ、今すぐあの少年について調べて頂戴。あたしあの子に会って話がしたいわ、なにがなんでもうちの仲間になってもらうわよ」


 茶髪の少女の突然の要求に気怠げな少女の大きな溜息がイヤホンから鳴り響いた。

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