第5話

「よし、それじゃ行こうか」


 和泉さんと話を済ませた僕は地を蹴って、再びサイクロプスのもとへと向かう。


(本当に体が軽い)


 身体強化で底上げされている僕の肉体は普段まったく運動をしていない自分のものとは思えなかった。1つ目の巨人のもとへとたどり着くと僕は奴と対峙する。


「……本当にこんな大きいやつ相手に戦えるなんてなんで思ったんだろうね」


 さっき和泉さんに言ったことを思い出して僕は苦笑してしまう。けれど今もこいつに負ける気はしなかった。


「悪いけどこれ以上暴れてもらったら困るからさ、ここでお前を倒すよ」


 魔剣を構えて僕は巨人と向き合う。恐怖はある、けど逃げようとはもう思わない。


 僕はこいつを倒す!


「グオオオオオオオオオオオ!!」


 サイクロプスが吠え、僕に向かって巨大な棍棒を振り下ろしてくる。


(あれ……やつの攻撃が全然早く見えない)


 これも身体強化のおかげなのだろうか、一つ目の巨人の振り下ろしてくる棍棒の速度が嫌に遅く見える。

 今の僕にとってこの攻撃は脅威になり得なかった。


(これなら……!)


 僕は振り下ろされた棍棒の動きを見切ってサイクロプスに向かって駆ける。


「はあああああああああああ!」


 僕は棍棒を振り下ろして隙が出来たサイクロプスの片腕に向かって手に握った魔剣を振り下ろした。


「ぎゃああああああああああ!」


 僕の振り下ろした魔剣はいとも簡単にサイクロプスの片腕を斬り落とした。腕を落とされた怪物は悲鳴をあげる。


「ええ!?」


 斬り落とした僕自身が驚く、まさかこんな簡単にあのサイクロプスの腕を斬れるなんて。


「A、Aランクのモンスターの肉体をこんなに簡単に……! これなら!」


 ぼんやりと勝てるかもと思っていたものが勝てるという確信に変わる。僕はさらに追撃を加えるために剣を振るった。

 振るった魔剣はサイクロプスの体をあっさりと斬り裂いていく。が、一つ目の巨人もただやられているだけではない。


「ぎぃいやあああああああああ!」


 体を斬られながらもサイクロプスは残った片腕を振り上げ、僕目掛けて振り下ろした。


「くっ!!」


 僕は身体を捻って振り下ろされた腕をかわした。あ、危なかった! いくら身体強化をしていてもあの一撃を受けたらただでは済まなかっただろう。 

 内心冷や汗をかきながらも僕は反撃に出る、目の前にあるサイクロプスに向かって魔剣を振り下ろした。魔剣を振り下ろされた腕は簡単に切断される。


「ぐおおおおおおお!!」


 両腕を失った一つ目の巨人は絶叫しながら数歩後退した。


「よし!」


 今なら倒せる! 怯んだ時を逃すわけにはいかない。僕は魔剣を振るってサイクロプスにダメージを与えていく。


「ぐぎゃ……」


「これで……とどめだ!」


 虫の息でもうほとんど動かなくなった巨人に最後の一撃を加えるために僕は飛び上がって怪物の目に狙いを定めて落下する。魔剣は見事サイクロプスの目に突き刺さった。


「お……おおおおおお……」


 最後の弱々しい叫び声をあげてサイクロプスはその攻撃で動きを止めた。もうぴくりとも動かない。


「はあ……はあ……僕が勝った?」


 ほ、本当にちゃんと死んだのか? 復活して襲って来たりしないよな?

 僕は一つ目の巨人の目から突き刺さした魔剣を引き抜き距離をとる。離れてからしばらく様子を見ていたけどサイクロプスは動かない。どうやら本当に死んだみたいだ。


「僕が……勝った。やった、やったぞ!」


 勝利を理解した僕の気分は高揚していた。


「本当今日はなんて日だ。ずっと欲しいと思っていたスキルまで手に入れてAランクのモンスターも倒してしまうなんて……ははっ」


 すべてが終わって僕はその場に力無く座り込んだ。

 じっと自分の手を見つめる、もう昨日までの自分ではない。心が解放感で満たされてる。


「サイクロプスを撃破、500ポイントを獲得しました」


「わあっ!」


 僕が勝利の余韻に浸っているとアナウンスが頭の中に鳴り響く。僕はその声で現実に引き戻された。


「び、びっくりした……って今凄く重要なこと言わなかった!?」


 なんかポイントがどうとか言ってたけど……ポイントって言うくらいならそれと引き換えることでなにか手に入れられたりするのかな?


「ねえポイントってどういうこと? 何かに使えるの?」


「ポイントを使うことによって魔剣は所有者に身体強化のような効果を付与します。ポイントはモンスターを倒すことによって獲得することができます」


 つまりモンスターを倒してポイントを得ることによって身体強化のような力を手に入れられるってことか。なんというか自分のスキル結構便利だなー。


「どんなものを手に入れられるんだ?」


「これが手に入れられる追加効果です」


 アナウンスの声とともに僕の目の前にリストのようなものが表示される。結構な数の追加効果がそこに記載してあった。


「うーん、これだけ多いとなにを選ぶかはじっくり考えたいなあ。それより今は和泉さんのところへ戻らないと」


 ポイントも限界があるからきちんと考えて効果を手に入れないとね。焦って失敗したくはない。

 僕はポイントで得ることの出来る効果の取得を後回しにして和泉さんのもとへと向かった。



・現在の保有ポイント 500ポイント

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