第12話 世界の果て

寮に戻り一度俺は頭を冷やして今の現状を整理することにした。まず俺は今日愛莉とデートの予定だったが、列車に乗ると何故か始発駅に戻る怪奇現象に見舞われ中止となった。二路線で試したが毎回ある地点で始発駅の鳥取駅に戻ってきてしまう。地図アプリで確認すると多少誤差があるのだが鳥取駅からおおよそ12~15km程度の地点で戻ってきてしまう。これは列車に乗っている時に起こる現象なのか、明日試しに自転車で行ってみようと思う。


「今ちょっといい?」


様々なことを考えながら俺は莉々菜にメッセージを送っていた。俺が記憶を無くして目覚めた時に現状を説明してくれた莉々菜、もしかしたら何か知ってるかもしれない。


そしてもう一つ気になるのが周囲の人の「首が無くなった」事だ。俺はあまりの衝撃に初めは吐きそうになったが、今では慣れてしまった。首が無くても周囲の人はまるで目が見えてるかのように生活している。話しかけても答えてくれる。口が無いのに。そしてこれに関して、鏡を見たところ俺には首が付いているっぽい。触った感覚でもちゃんと髪の毛も鼻もある。愛莉も首が付いたままだったのでこの共通点を探したい。そして莉々菜も首ありか首なしか気になる。


考えると衝撃の出来事の連続で気が滅入りそうなので散歩で外に出ようにも人通りの少ない夜に首なし人間とすれ違うことを考えると怖すぎるのでこの日は休むことにした。


結局この日は考え込んで中々寝付けず、また悪夢を見てしまい朝のアラーム前には目が冴えていた。


月曜日、学校に行く前に莉々菜の部屋のインターホンを押してみる。


「ちょっと待ってー」


昨日送ったメッセージが返ってきてなかったし一昨日も体調不良で休んでたから出てこないと思っていたがどうやら出てきてくれるっぽい。


「おはよー朝からどうした?」


目の前には思いの外元気な、いや いつも通りの「首のある」莉々菜が立っていた。


「もし知ってたらなんだけど、俺の記憶が無くなる前の事って、何か知ってる?」


俺はあえて莉々菜に鎌をかけた。俺は今まで記憶がないことを誰にも話してない。まずここを突っ込んでこない限り莉々菜は何か知っている。


「どうしたの?急に。何かあった?」


確信は無いが莉々菜は何か知ってそうな反応だ。だが同時に、何故かコイツになら今までのことを全部話しても良いような、信用できるような気がした。


「莉々菜に聞いて欲しい話が山ほどある」


そういうと莉々菜は微笑むような顔で


「長くなりそ?とりあえず入って」


と言い、俺はとりあえず莉々菜の家に入ることにした。


俺は今日学校だということを忘れ、莉々菜に記憶がなくなったこと、この前のデートで起こった出来事を全て話した。


「それで、私が何か知ってないかって言いたいの?」


全てを話した後、莉々菜はそう答えた。


「うん。莉々菜なら俺のこと、この世界のこと、何か知ってる気がして」


俺は正直に今思っていることを話した。


「じゃあさ、今日学校サボっちゃおっか。この世界の果て、行ってみない?」


莉々菜から突然の提案だ。「この世界の果て」と聞くと響きはカッコいいが俺の言っていた鳥取駅に戻ってきてしまう地点のことだろう。昨日は急にこんなことになって怖いと思っていたが今の俺は少年に戻ったようだ。


「行こう。世界の果てへ」


俺は最高にカッコウつけた返事、いや最高にイタイ返事をして俺たちは世界の果てを目指すことにした。チャリで

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