ある交差点

ボウガ

第1話

事故の多い交差点、しかも同じガードレールにいつも車がぶつかる。霊感の多いAさんが、そこのを通るたびに少女の幽霊をみた。幽霊にしてはかわいらしい子で、そればかりじゃなく、その事故の多いガードレールの脇の電柱にいつもその子をしのんでか、花がおかれているのだが、その花を供える人をみては、その人に会釈をしている様子が見られた。


そして、Aさんはあるとき反対の歩道で事故現場をみてしまったのだが、そこでもその少女への好感度があがった。少女は、事故の瞬間、近くを通りがかったOLの手をつかみ、何かを大声で怒鳴っているようだった。その声は丁度反対の歩道を通りがかったAさんもぼんやりと聞こえるほどだった。


「幽霊になっても危険を知らせるなんて、優しい子だなあ」

とおもっていたが、その事故にあいそうだったOLというのが友人の知り合いだったらしく、こんな事をいっていたらしい。


 そこを通りかかったOLは、事故のよくある道だとしっていたので、小走りで通りぬけたら、後ろから舌打ちがきこえた。

「え?」

 振り返ると、誰かが自分の手をつかんでいる。下をみる、と少女がにこにこして手をにぎっている。

(危ないから離れなきゃ)

 と思ったOLはその手をはがそうとするが、びくとも動かない。

「あなた、なんなの、あなたも危ないわよ!!」

「私はいいの……」

「どうして!!あなたお母さんは!?」

 ふと少女はしたをむいたかと思ったら今度はおもいきり顔を上げていった。

「私は、お母さんを探しているの……お母さんに似ている人をみつけては、ここで死ぬように、この通路で事故が起こるようにお祈りしていたの、お姉ちゃん、こっちきて、こっちきて、こっちきて!!」

 その顔はぼこぼこにへこみ、手足もぐしゃぐしゃにまがっていた。そして、彼女の腕を強くつかんでいたのだ。 

「私はあなたのお母さんじゃない!!」

 女性はたまたまもっていたお守りをふりあげると、少女はぱっと手を放し、悲鳴をあげてにげていった。それは老いた母が間違えて買った交通安全のお守りだったという。


 以後、その話の真相を確かめるために彼女は色々しらべた結果。ある事実が判明した。人々は話したがらないものの、その事故が多発する場所で初めに起こった事件というのは、一家心中だったという。会社の事業で失敗し、借金を重ねていた父親ににげられ、必死で家系をささえていた母だが、残された借金に苦しみ、死のうとした。どこでもいいので車で突っ込もうと考えていたらしい。それは深夜のことで、なるべく他人に迷惑がかからない場所へつっこもうと海へでかけたはいいが、決心がつかなかった。ガードレールのない海辺の車道、つっこめばそのまま死ねる、しかし、なかなかしねない。仕方なく母親は飲酒をし、これでけじめをつけようと大量に酒をのみ、海へ、しかし、それでもギリギリのところでふみとどまり、ブレーキをかけた。

隣では睡眠薬をのませた娘がねている。娘に罪はない、と、考えをあらため、家路につくことに、しかし、その途中で事故がおきたのだ。飲酒をしていた母親は、運転中に前後不覚になり、車道に老人が立っているように錯覚した。そのとき、巻き込んではいけない!!とハンドルをきると、例のガードレールにつっこんでいたらしい。


 助手席をみると、ボコボコに凹み、娘は即死だったらしい。母は怖くなり逃げてその後は消息不明。


 それ以来、そこには娘の幽霊がでるようになった。それは警告ではなく、母親によく似た人間をみつけて、事故をおこさせ、あの世に連れて行こうとしているのだろう。



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ある交差点 ボウガ @yumieimaru

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