第23話 逆さまわり

よう、俺はローランド。騎士だ。

騎士といっても実家は金貸しで、そこで儲けた金で王様から爵位と領地を買っただけなんだけどな。

今日はそんな俺の一日を紹介するぜ。


朝、日の出とともに天蓋付きのベッドで目を覚まし、メイドが持ってきた水で顔を洗って身なりを整える。

本当は朝早いのが苦手で二度寝したいところなんだけど、ママが食事を作って待ってるから起きざるをえないんだよな。

ママは料理好きで、そんなのメイドにやらせとけばいいのに、毎日朝早くから用意して待ってるんだからこっちも気を使っちゃうよ。


で、食事が終わったら朝の政務。政務っていうと偉そうだけど、ほとんどは領地内の揉め事だとか、納税額だとかの書類を斜め読みしてサインするだけの簡単なものだ。たまに痴情のもつれみたいな事件の報告もあってマジうける。


それが終わったら今度は腹ごなしに運動する。

木剣を振ってさわやかに汗を流す俺。最高にイケてるぜ。


んで、またママの作った昼ご飯を食べて、今度は領内の視察に行く。

働いている農夫たちをのんびり馬上から眺めると、優越感を感じるな。

たまににこやかに手を振ってやると喜ぶんだぜ。こっちは納税マジ感謝って感じなんだけどな。


それから冒険者を雇ってモンスター退治にいく。

俺の領地は辺境にあるせいでゴブリンだとかオークだとかモンスターが結構出るから、村とかに被害が出る前に定期的にパトロールするんだ。

っていうと大変そうだけど、俺は馬上から冒険者どもに適当に指示を出すだけ。

実際には剣も抜かない。


この日は冒険者が大猪を仕留めて、それを近くの集落に持っていったら宴が始まっちゃって「食べて行ってください」とか言われてマジ困った。

いや~、俺騎士だからあんまりワイルドなのは口に合わないんだよな。それに帰ったらママが食事用意しているだろうし。今日はいらないなんて使いを出しても悲しませちゃうだろうかなあ。


あ~。今日は食い過ぎた。もうマジ無理。お腹がきつすぎるから寝れもしない。しょうがないから適当に本でも読んで時間を過ごす。

で、眠たくなったら寝る。いつもだいたいこんな感じだ。

騎士ってもっと楽しそうだと思ったんだけど、なんというか普通だな。




よう、また会ったな。俺だ、ローランドだ。

聞いてくれ、マジびっくりなんだけど、王様が変わったら騎士の称号を取り上げられちまった。それどころか家の稼業も廃業になっちゃってマジ勘弁なんですけど。


いまは冒険者として、俺の領地に入ってきた新しい騎士の下で毎日汗水たらして働いているよ。あごで使う身分だったのにあごで使われる側になるとは。ほんとトホホだぜ。


少し前まで貴族の令嬢と結婚してたんだけど、俺が騎士の称号を取り上げられた途端、あっさり出ていきやがった。で、いまは昔雇っていたメイドと結婚して、小さな家で両親と一緒に暮らしているよ。そうこうの妻は堂より下ろさずっていうけど、俺は毎日家から叩きだされるように仕事へ行くんだ。


っていうか、金貸しは廃業したのに、いまだに俺のところに金を借りにくる奴らがいるんだ。そんな金ねえってのに親がお人好しだからすぐ貸しちゃうもんで、生活が一向に楽にならないよ。




お、久しぶりだな。俺だよ、ローランドだよ。

いや~、情けは人のためならずっていうけど、親が貸してた金のほとんどがのしつけて返って来るもんだから、かなり生活は良くなったよ。

そんで、いまは冒険者を辞めて本格的に金貸しをしているよ。


どうだい、家に寄っていかないか?

妻が母から料理を教わっていて、毎日山ほど作るもんだから家族だけじゃ食べ切れないんだ。

そうそう、子どもがひとりいて、こいつがまたやんちゃ坊主で、

「騎士になる!」

って言ってきかないんだ。やめとけって言っているんだけど。

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