第19話 四天王
冒険者ギルドの会議室。窓を閉め切った薄暗い室内で五人の冒険者が円卓を囲っている。
「さて、今日は我々、”南大陸冒険者四天王”について話をしたい」
そのうちのひとりが両肘を卓に置き、手を組んで話始めた。
「皆もご存じのとおり、我々は四天王だ。しかし五人いる。これは死んだと思われていた”路地裏の王者”が戻ってきたために生じた事態だが、今日はこれを解消したい」
「えー。めんどくさい。このままで良くない?」
女が頬杖をついたまま言うと、
「良くないわい!」
老いた冒険者が声を荒げた。
「わしは”里の賢者”と言われておるが、賢者のくせに数も数えられぬと、北の冒険者どもに馬鹿にされておる。これはゆゆしき事態じゃ!」
女はやかましいしゃべりに耳を塞ぎながら、
「じゃあ、五天王とか、名前変えちゃえば?」
うっとうしそうに提案した。
「いや、”南大陸冒険者四天王”の名前は売れている。改名すると我々の商売にも影響がでるし、周囲も混乱するだろう」
「そうじゃ。それに依頼主からペアで行動せよと言われたときどうする? ひとり余るぞ」
場がピリッと引き締まる。
「それはまずいわね。そうなると誰かに抜けてもらうしかないけど」
さらに殺伐とした雰囲気まで漂い始めた。
「ここは若いもんから抜けるべきじゃな」
「投票で決めてみては?」
「弱い奴が抜けるべきだ!」
「四の五の言わず、じゃんけんで決めたらいいじゃねえか! (≧▽≦)/」
ひとりがコホンと咳払いし、
「我々が争っても得をするのは魔物だけだ」
「そうじゃな」「そうね」「そうだな」
場を収め、代わりの案を提示した。
「ここはひとつ当番制にしてみてはどうだろうか? 指定の日にちごとに四天王を入れ替えて、当番以外は休暇を取るような……」
「えー、そのほうが混乱しそうだけど」
「非番の日は四天王を名乗れなくなるのかよ」
「当番を待ってたら、わしはぽっくり逝きそうじゃ」
「お、今日は9番か。四捨五入したら10番だ! なんちゃって(^^)」
ドンッ、とひとりが机を叩いた。
「休みがほしくて四天王やってるんじゃねーんだよ」
「そうですね」「そうね」「そうじゃな」
一同が黙っていると”里の賢者”が、
「良い案を思いついたのじゃ」
ポンっと手を叩いた。
冒険者ギルド。職員がたむろする四天王のもとへ向かう。
「東の国の王様から”南大陸冒険者四天王”宛てに依頼です。どなたか一名、兵士の訓練をみてほしいとのことです」
「一名……俺だけじゃだめだな」
「えっ」
職員はうろたえた。
「で、では、南の岬にオーガが出たので、四天王のうち三名ほど討伐に向かっていただけないでしょうか」
「三名、となると四人で向かわなければなりませんね」
「え、いや、依頼料は三人分しかいただいてません。たぶん、三人もいれば十分な依頼だと思いますけど……」
「そうではないのじゃ」
”里の賢者”が人差し指を立てて左右に振る。
「わしらは五人で四天王。つまりひとりでは0.8天王じゃ」
「会議やりなおせ。半端者」
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