第18話 凄腕の
王国、冒険者の連合軍と魔王軍との戦いは
「左翼軍、押されてます」
「後詰めの部隊を救援に向かわせろ」
緊迫する本陣。ひとつのミスが戦局を左右する喧騒の最中、まったく状況にそぐわない恰好をしたかわいい女の子がいる。
「あわわ、大変です~」
ひらひらしたドレスをはためかせ、忙しそう、だが特になにかをするわけでもなくクルクル回っている。
「右翼軍、敵を突破。陣地を奪還しました」
「よくやった」
吉報に人々が沸き上がると女の子も、
「やりました~」
胸元で小さく拍手しながら跳びはねる。
「右翼軍はこのまま敵を掃討するようですが、陣地内に多数の死傷者がおり、至急、救護部隊を向かわされたし、とのことです」
「……いまはどこも手一杯で、人員を割く余裕がない」
大将と副官が頭を悩ませていると、
「わたし行ってきます!」
女の子が勇んで手をあげた。
「頼めるか?」
「まかせてください!」
両手を広げて、トットットッと走り出した。
「これはひどい状況です~」
右翼軍が奪還した陣地に向かうと、そこは死体の山だった。
「でも、わたし負けません!」
えいえいおー、と女の子は小さく握りこんだ右手を天に突き上げた。
「いきますよ~。リザレクション!」
リザレクションとは蘇生魔法である。
すでに呼吸をしていない冒険者に魔法をかける。すると、
「ああぁ……」
息を吹き返したのか、おもむろに上体を起こす。
「わわ、まだ寝ててください。大丈夫ですから」
女の子は冒険者を横にし、また別の冒険者のところへ。
「はわわ。こっちは大変です~ 手足があんなところまで」
魔王軍によって手足がもがれ、四方に放り投げられている。
「ひとりで集めるのは大変です~。そうだ!」
胸の前で手を組むと、
「ようせいさん。どうか力を貸してください……」
厳かに祈りを捧げる。すると翼の生えた毛むくじゃらの生物がポンッ、とあらわれた。
「ようせいさん。お願い。この人の手と足を集めてください!」
ようせいはすぐさまパタパタ飛んでいって手足を集める。
運ばれてくる手足を元あった場所に置き、
「ええっと。なんかえらい神様のランプになって、あなたの傷をいやします! ヒーリング!」
魔法で縫合してひっつけた。
「そして、リザレクション!」
「ううぅ……」
驚くべきことに、ちぎれたはずの手足が繋がって動き出す。
「ふぅ。数が多くて疲れます~」
これだけの魔法、さぞ魔力を消耗するだろう。
女の子は弱音をもらしたが、すぐに両手で両頬をぱちぱちと叩き、
「でも、わたしがんばります! そうだ! こんなときのためにとっておきのものが……」
どこにあるのかわからないポッケから小瓶を取りだした。
「じゃじゃ~ん。おばあちゃん特製のポーションです~」
蓋をあけ、
「お行儀がよくないけど、仕方ないです。おばあちゃんには内緒です~」
ぐびっと飲み干した。
「ふぅ。まずい……」
べえっと舌を出して、
「でも、これでまだまだ魔法使えます!」
ふたたび冒険者の死体へ駆け寄るのだった。
しばらくして作業を終えた女の子は、
「じゃ、みんなでお家にかえりましょ~」
「……」
冒険者たちを引き連れて帰陣することにした。
本陣前。もう少しだ、というところで警備の兵士をみかけたので、
「もどりました~」
と手を振った。
兵士は、じっと女の子の後ろの冒険者たちを見て、
「アンデッドの大軍だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
悲鳴をあげて逃げ出した。
「羽の生えた悪魔もいるぞぉぉぉぉおおおおおお!!!!」
あわてふためく兵士たちに女の子は、
「はにゃ?」
人差し指をあごにあてて首をかしげた。
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