第2話




「おぎゃぁぁ!おぎゃぁぁ!」



 西暦3000年 9月30日


 白銀 千冬 だった男、爆誕である。



 そして3ヶ月が経過した頃…意識がはっきりとし始めた。



(うぉぉ……まじか……転生しちゃったぁぁ…!?)


 生まれてすぐは思考しようとすればすぐに眠くなり一瞬で眠りについていたためほとんど何も考えることができずにいた。


 たぶん体や脳が発達しておらず難しいこと、そもそも思考するというのが赤ちゃんにはできないのだろう。

 たとえ成人した意識があったとしても。


 しかしようやく最近疲れたり眠くならなくなり長時間の活動ができるようになってきていた。


 そして今日、初めて鏡を見た。


(………………白髪生えてる)


 ごめん、もっとなんか伝えたいんだけどちょっとね、なんで?

 なんで赤ちゃんに白髪生えてんの?

 おかしくね?

 黒い髪の間に白い髪が一本どころか結構あるんだけど。

 メッシュみたいになってんだけど。

 俺ハイライト入れた覚えねぇけど。


 顔はまぁ…赤ちゃんだから成長してみないとわからないが、目は大きいし整っていると思う。


 だけどやっぱこの白髪が気になる!


(絶対小学校でいじめられるぞこれ……ってそうじゃない!もっと色々考えることがあるだろ…!)


 容姿なんてどうでもいい。

 大事なのはこの現状だ。



 とりあえず今わかっていることは少ない。


 まず転生した。

 これは確定だろう。

 誰がどうやったのかは知らないしもしかしたら世間にも結構いて隠しながら生きている人も多いのかもしれない。

 しかし概ね喜ばしいことだった。


 記憶があるということは最初から全てをやり直せるということ。無駄な時間を幼少期から省き、訓練に充てることで速い段階から戦闘力を磨くことができる。


 そして次

 俺の名前は前世と変わらず千冬だった。

 だけど苗字は違った。

 しかし、前世で誰もが知る苗字だったことに心底驚いた。

 赤ちゃんがしてはいけない絶頂顔をしていたことだろう。なにせ俺の生まれた家は『黒鉄家』だったから。


 黒鉄家というのはダンジョン探索を生業とする最強の一家であり大企業黒鉄グループを立ち上げた今を煌めく超名門家なのだ。


 ダンジョンと人にはランクというものが存在し、

 下から初級、中級、上級、超級、絶級、破滅級と分かれている。

 そして黒鉄家は世界でも10人しかいない絶級探索者のうち3人を輩出している本当に馬鹿げた一族なのだ。


 そんな家に、俺は生まれてきた。


(絶頂しない方が無理だっつーの)


 死ぬ間際だったか、俺は何もいらないと言った。

 努力で全て掴み取れると。

 それは嘘じゃない。

 今もその考えは変わらない。

 だけど人にはスタート地点が存在する。


 運動が得意な子、不得意な子のように血というのは親から子へとある程度引き継がれるものだ。

 前世の俺は探索者としての才能や適性がほとんどなかった。

 そして俺はそこからスタートして上級まで行った。あのまま死ぬほど努力していれば超級、絶級といつかは上がれたかもしれない。

 しかしそれはいつかはの話だ。

 今世はそのスタート地がえげつないほどの適性と才能に恵まれているかもしれないためいつかではなく10代ですら超級へ届く可能性もある。


 今世ではカマキリをぶっ殺せるかもしれないのだ。


(ありがたく貰えるもんは貰っとくぜ)


 願わくば運動神経抜群の体だと嬉しい。

 それさえあればあとはどうとでもなる。


 今世で取り組むべきことは脚力アップのための走り込みと瞬発力の底上げ。そして脚力関連のスキルの獲得にスピード系の魔法の習得。

 あとは魔物をぶっ殺してれば魔力値は勝手に上がるためオールオーケー。



 ーーー全ては最速になるため



 それ以外は全て捨てていいと、まだ見ぬ明るい未来を想像する千冬だが…まだもう一つ大事な情報があった。



 そしてその最後の情報…それは…


「ちふゆちゃん、おっぱいのお時間でちゅよー」


 母が美人でおっぱいがデケェことと





 ーーーー俺の息子とゴールデンボールが二つ行方不明なことだ




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