第59話 メギドとアメジストの実力

「うおおお! アメジストを捕まえたら一生遊んで暮らせるぞ!」


「メギドでもいい! どっちでもいいから、捕まえるんだ!」


 メギドとアメジストに向かって警察達が追いついてきた。

 完全にターゲットにされている。


 瞳をドルマークにしている警察の皆さん。

 彼らからしたら絶好のチャンスだ。


『おおっと。警察達が一気に動き出したぞ。果たして人気怪盗の運命やいかに!?』


 実況にも熱が入っていた。

 彼女やファン達からしたら、美味しいイベントである。


 ただ、見た限り警察のランクは低い。

 高ランクは何をしているのだろう?


「高ランクが出てくるのは後半です。いきなり現れては弱い怪盗が速攻で捕まってしまいますからね。緊張感と盛り上げのために、強敵は最後に出るシステムなのです」


 最初は弱い警察しか出てこない。

 2人はそれを計算して、目立つアピールをしたわけだ。


 低ランクの警察としても強い警察が出てきてしまってはそいつらに獲物を奪われてしまう可能性がある。

 だからこそ今のチャンスに報酬の高い怪盗を捕まえておきたいのだ。


「さあ、来いよ。まとめて相手をしてやる!」


 囲まれているメギドがニヤリと笑う。

 次の瞬間、周りの警察が一気に吹っ飛ばされた。


 殺傷力は無いらしく、大きく飛ばされたはずの警察は、なぜかダメージは負っていない。

 触れた相手を吹き飛ばすアイテムを使っているようだ。


「オラァ! くたばれ!」


 凄まじい掛け声とダイナミックな動き。

 次から次へと警察は吹き飛ばされていく。


「メギド様! 素敵です!」


「あいつ、やべえよ。強すぎだろ」


 観客たちも彼を見て、尊敬と畏怖の眼差しを向けていた。

 中々のインパクトだ。


「むう。少しはやるようですな。マスター、仮に戦いとなっても、奴に勝てますか?」


 フォトが少し不安げな目を向けて来る。

 あの豪快な動きを見れば当然か。


 だが、僕としての感想は、周りと全くの逆である。

 あの姿はそこまで脅威ではない。


「確かに思ったよりメギドは強敵みたいだ。でも、負けることは無いと思う」


「おお! 本当ですか!」


「動きが派手すぎるんだ。ダイナミックだけど、その分隙が大きく、読みやすい。カウンターを決めれば勝ちだね」


 さらに接近戦を好むタイプというのがありがたい。

 僕は遠距離武器を持っていないので、遠くから攻撃されたら厄介だが、向こうが近づいてきてくれたらその手間も省ける。


 ただ、やはり嫌な予感は消えない。

 僕の方が強いはずなのに、直感による警笛が鳴りっぱなしだ。

 これについては覚えておいた方がいいかもしれない。


 ちなみにアメジストの方は、メギドと違って繊細な動きで警察を無力化していた。

 近距離と遠距離をうまく使い分けての立ち回りだ。

 オールラウンダーなタイプなのだろう。

 その完璧な動きはあらゆる面で美しい。


 観客は歓声を上げるというより、声も出なくてアメジストに釘付けとなっている。

 まさに絶妙のテクニック。

 メギドのような派手さは無いが、見惚れるほど綺麗だ。


「アメジストはさすがというべきか、かなりやる。しかもまだ本気じゃないみたいだ」


「ぬう、マスターがそう言うなら間違いないでしょう。私でもなんとなく分かります」


「とにかく、色々な意味で参考になったよ。そろそろこちらも動き出そうか」


 いつまでも見ているわけにはいかない。

 警察の方も人気トップの確保は諦めかけているように見える。


 下手をすれば今度は弱そうな僕たちを狙ってくるかもしれない。

 現状、人気の面では不利だ。

 その分こちらは成績で勝負をしなければならない。


「よし。それじゃあ、行こうか!」


 今度はこちらが本気を出す番だ。

 誰よりも多く宝石を取得してやろう!

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