第50話 僕はデザインがイメージできない

 実は大人気ユーチューバーだったフォト。

 可愛い仕草と衣装センスで大人気なのだが……


「でも、めちゃくちゃ下手だね」


 肝心のゲーム内容は壊滅的であった。

 初心者の方がマシレベルである。

 どうして機械である彼女がここまで操作がおぼつかないのだ?


「うっさいです! 可愛いからいいのです! 可愛いは正義です!」


 ちなみにアンチから腕前を酷評されると同じようにブチ切れている。


 信者からは『またフォトちゃんがキレた』『キレるフォトちゃん可愛い』などのコメントが流されていた。


 ただ、この動画で真面目に学べる部分も多い。

 しっかりと人気は取れているのだ。


「言っておきますがチャンネル登録数はどんどん増えています。人気は上位ですぞ」


 自慢げなフォトであるが、確かに自慢できる確実な実績だ。

 本当に凄いと思う。


「大事なのは見た目と愛嬌です。ちょっと下手だったり弱かったりしても、きちんと自分の味方をしてくれる人は増えます。いかにコスチュームが大事か分かるでしょう?」


「……そうだね」


 逆に言うとどれだけ実力があっても、見た目や性格が悪ければ人気は取れないか。


「でもごめん。実は僕、そういうのが無理なんだ」


「無理? それはどういうことですか?」


 真面目なニュアンスで話す僕にフォトが首を傾げた。

 言葉に驚いたというより、真剣な表情に驚いているようだ。


「センスが無いって言えばいいのかな。僕にはかはいくらでもイメージできる。でも、は、どうしても想像することができないんだ」


「ほう、なるほど。つまり、それがコミュ障の原因にも繋がっていると」


「そうかもしれない」


 デザインをイメージできないから、会話もイメージもできない。

 これを理解してくれる人はいないだろう。

 余計なことを言ってしまったかもしれない。


「ふ~ん。ま、いいでしょう。ではマスター、この話は忘れてください」


「…………へえ、意外だね。怒らないんだ」


 てっきり『甘えるな』とか言われると思ったのに、まさか分かってくれるとは……


「要はコスチューム関連を私がデザインしてあげればいいだけですね。お任せください。私好みにマスターをカスタマイズしてやりましょう。ぐふふふ」


 違った。

 この子は僕を着せ替え人形にしたいだけであった。


 人間の僕が人形の思うがままになってしまうのである。

 まあ、別にいいけど。


 色々な人から気味悪がられていたという僕の人間的に故障した部分。

 それを否定されなかったことが、僕はちょっとだけ嬉しかった。


「でも、今はお金が無いから無理だね」


「ち、そうでした。まあ、いつかのお楽しみに取っておきましょう」


 それから僕たちは無言の時間を過ごす。

 いつも喋っているフォトが今は黙っていた。


 僕はなぜかそれが心地よく感じた。

 無言が心地いいとか、コミュ障で悩んでいたのが馬鹿らしくなる。

 なのかもしれない。


「マスター。その代わり、大会では絶対に勝ちますよ。いいですね!」


「はいはい。分かってるよ。まあ、ゲームは難しい方がやりがいはある」


「そっち方面だけは頼りになりますね。ええ。その調子で台詞もバシッと決めますよ」


「き、決め台詞。忘れてた。ダメだ。僕が一人で決め台詞なんて無理だ!」


「だから急にヘタレるんじゃありません! 姫咲さんのカンペを信じなさい! まったく、次に結果を出せなければ後は無いのですからね。これは我々の最終決戦なのですよ!」


 次が僕の怪盗としての最終決戦か。

 そうだな。だったらやるしかない。

 うん。今の僕ならやれるはずだ。

 信じよう。

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