4章 怪盗大集合!

第35話 怪盗人気ランキング

 翌日、僕はいつもと変わらず教室でクラスメイトの会話に耳を傾けていた。


「ねえねえ、みんなはどんな怪盗さんが好きなのかな?」


 今日も姫咲さんグループは怪盗についての話題で盛り上がっている。


 毎日の練習の結果、姫咲さんが相手ならほぼ自然に近い形で会話が出来るようになった。

 

 だが、グループの方々との会話はさすがにまだきつい。

 それはもっとレベルを上げてからだ。


 ちなみにフォトは前回のことで色々と懲りたのか、家で待機していた。平和でよろしい。


 姫咲さんグループの今回の議題は、『好きな怪盗について』だ。

 この話題が一番盛り上がる。


 この町には怪盗が100人以上いるのだが、その個性も様々だ。

 人気がある怪盗もいれば、そうでない怪盗もいる。


 僕は新人でかつ、存在感が無いので後者なのは言うまでもない。


 人気はランキング制となっており、上位に食い込むほど有名度は上がっていく。


 話題になっているのは、だいたいランキング上位の怪盗だ。

 僕にはまだ雲の上の話である。


「やっぱり1番は怪盗アメジスト様でしょ。あの方の美しさに敵う怪盗なんていないわ。なんたって、ランキング1位だものね」


 真っ先に上がったのはやはり怪盗アメジスト。

 人気ランキング1位は伊達じゃない。


 アメジストがトップになって以降、怪盗を将来の夢にする女子が一気に増え始めたという。

 それだけ強烈な影響があったのだろう。


 元々、怪盗は男がなるもの思われていた。

 事実、つい最近までライトニングという男の怪盗がトップを独占していた。


 だが、女怪盗であるアメジストがそれを覆したのだ。

 これは怪盗革命と呼ばれるほどの衝撃的な出来事だったらしい。


 それから女怪盗の認知が一気に広がり始め、今ではむしろ男よりも女の方が人気が出やすいとまでになった。


「私は怪盗メギド様かな~。罵倒されたい」


「うわっ、マニアック! でも分かるかも。そういう人って多いよね。人気ランキング2位だし、かっこいいもんね」


 次に出てきたのが怪盗メギド。

 前回のランキングでは2位だった怪盗だ。

 その性格は非常に荒っぽい事で有名である。

 

 口が悪く、爽やかな怪盗のイメージとはかけ離れているのだが、その部分が一定の層に受けているらしい。

 これも個性の一部なのだろうか。


「私はライトニング様が好きだったけど、もう怪盗を辞めちゃったんだってね」


 昔は人気ナンバーワンの怪盗だったライトニングは、アメジストがトップとなってからはさっぱりその名を聞かなくなった。

 どうやら怪盗は辞めていたらしい。


「ふふ、いいよいいよ。みんな本当に怪盗さんが好きなんだね!」


 それぞれの主張を姫咲さんは目を輝かせて聞いている。

 でも、この中で誰よりも怪盗が好きなのは間違いなく姫咲さんだけどね!

 その愛は計り知れないレベルである。


「そういえば姫の好きな怪盗は誰なの?」


「私? ふふふ~。私のお気に入りは、この怪盗さんだよ」


 姫咲さんがスマホの写真を周りに見せた。

 怪盗の力で視力がアップした僕は、遠目からでもその写真が見える。

 写っていたのは怪盗クチナシ。僕である。


「うわ、近っ! 至近距離じゃん。どうやって撮ったの!?」


「へへ~。内緒だよ~」


 角度的にこの前にお姫様抱っこした時のものだ。

 そういえば、写メを取っていたな。


 いつの間にか自分が映っていないバージョンも何枚か取っていたらしい。

 恐るべき早業だ。


「う~ん。この怪盗、見たことあるような……確か、怪盗カオナシだっけ?」


 惜しい!

 クチナシです。カオナシではありません。


 でもおぼろげに名前くらいは憶えられているのか。

 ちょっとは認知が広まってきたのかな。


「あまり見ないし、新人だよね。相変わらず姫はレアな怪盗が好きだね」


「まあね。でも、この怪盗クチナシさんは、将来間違いなくビッグな怪盗さんになるよ。これは私の予言です」


「おお、出た。姫の予言! 面白そうだし、あたしも注目してみようかな」


 そんな姫咲さんは僕を見てウインクをしていた。

 果たして僕は彼女に恥をかかせぬようにビッグな怪盗になれるのだろうか?

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