第30話 最難関、Aランクのミッション

いよいよ最難関であるAランクのミッションが始まる。


失敗すれば性欲に釣られたマヌケな怪盗の出来上がりだ。


「フォト、今回は一気に終わらせる。を出すよ」


「え? どういう意味ですか? もしかして、前は本気じゃなかったとか?」


 そう。実のところ前回は自分がどこまで動けるか試していた。


 言うならば試運転だ。

 怪盗の力はだいたい理解できたし、今回は出し惜しみ無しでいいだろう。


 完全に集中する。

 ゲームでラストステージに挑む時のあの感覚だ。


 見えてきた。

 どのルートが一番効率的にお宝にたどり着けるのか。


 特にフォトを通じて姫咲邸の構造が全て見えるのはありがたい。


 入り口は数十か所あるが、その中でも警備の薄い場所を僕は真っ先に把握した。


 ステルスを最大に意識してその場所まで移動。

 そのまま侵入に成功する。


(まさか!? Aランクの侵入をいとも簡単に?)


 そこから屋敷内を進む。

 警備は最高レベルに厳重だが、僕のステルス能力もそれに負けない。


 最速かつ、最短距離で宝までの距離を算出。

 今回は一切無駄な行動はしない。


 単独で行動している警察は一瞬で気絶させ、二人以上で警備されている場所は迅速に通り抜ける。


 途中で落とし穴や鉄球などの罠も見受けられたが全て回避。


 監視カメラやセンサーには絶対に触れないように進んだ。


 最高難易度のAランク。

 だが、僕の本気はそれを遥かに上回っていた。


(馬鹿な……なんという進行速度。これが本気を出したマスターなのですか! この調子なら本当に突破できてしまいそうです。あなたはまたしても私の予想を上回ったのですね)


 特に今回は絶好調である。

 絶対に失敗できない思いからいつも以上に集中ができている。


 既に半分ほど問題なく進んでいた。

 姫咲さんの所まであと少しだ。


(女体の為なら能力以上の力を発揮するという事ですか。さすがはマスターです!)


(聞こえの悪い事を言うんじゃない!)


 次の大広間を抜けたら、姫咲さんがいる場所へ到着だ。

 もうお宝は目の前である。


(ち、ここはかなりキツイ)


 だが、その広場には十人以上の警察が交代をしながら徘徊していた。

 質がかなり高く、隙も無い。


 ここは僕でも正面から突破するのは難しい。

 とりあえずは、目立たない場所に隠れよう。

 作戦を練る必要がある。


(ここは最終防衛ラインですね)


(最終防衛ライン?)


(お宝前の最後の砦。一番難しい部分です。ゲームで言うなら、ボスステージですね。高ランクではこういうギミックも発生するのです)


 最終防衛ライン。

 確かにその名にふさわしい警備だ。

 並みの怪盗では突破不可能だろう。


(しかも、彼らは銃を所持しています。見つかったらハチの巣です)


(下手すれば死ぬだろ、それ)


(大丈夫です。実弾ではなく、電撃を伴うテーザー銃です。怪盗の体は頑丈なので、死ぬことはありません。ただ、死んだほうがマシというほど痛いだけです)


(そっか。それなら安心……できねーよ!)


 これだけの人数から銃撃されたら、いくら僕でもひとたまりも無い。


 いや、どれほどの怪盗でもここを楽に突破するのは不可能だろう。


 現最強といわれる怪盗アメジストでも突破は難しいはずだ。


 だが、僕には最後の切り札があった。

 そのために大金を払っていたのだ。


(よし、フォト。ここで変装グッズを使おう)


(そうですね。今が使いどころでしょう。異論はありません)


 前回のガチャで手に入れた変装グッズ。

 高価なレアアイテムであるが、決して失敗できない今こそ、このアイテムを使う時だろう。

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