第14話 ここからが最大の試練

 敵を全て倒して、宝石を手に入れることに成功した。

 フォトからはかなり絶賛されている。


「ええ。完璧です。しかも時間を見てください。まだ5分も過ぎていません。新人でこんなタイムを叩きだしたのは前代未聞です!」


「そ、そう?」


 確かに自分でもよく動けたとは思うが、そこまで褒められたらさすがに照れるぞ?


「これはあの『怪盗アメジスト』すら上回っているかもしれません。伝説となれる才能です」


「それはちょっと大げさじゃない?」


 さすがに人気ランキング1位の怪盗と張り合うつもりは無い。

 まだ実績も無いし。


「まったく無駄のない動き。そう、まさに機械のように洗礼された完璧な動きでした」


「機械って……もうちょっとかっこいい呼び方は無いの?」


 褒めてくれているのはありがたいけど、少し複雑な気分だ。


 確かに効率的なのは好きだ。

 今回も僕が望むを形にしただけ。

 でも……


「コミュ障で機械的って言われたら、まるで自分がロボットみたいに思えてしまうよ」


「よいではありませんか。私だって機械なのにポンコツで毒舌で感情的です」


 にっと歯を出して笑うフォト。

 つられてこちらもつい笑ってしまう。


「確かにね。僕たちってお互いに間違って生まれてきてしまったのかもしれないね」


「いいえ。間違っているのは私たちではなく、世界の方です」


「なんだよそれ。本当に厨二病な人形だな」


 二人で笑い合う。

 改めて思うと本当に不思議で変なコンビだ。


 でも、個性で言えばこれほど面白いコンビも無いのかもしれない。


 最強のコミュ障怪盗とポンコツ毒舌人形。

 歪ではあるが、意外と行けるのではないか?


「よし! それじゃあ、帰ろう!」


 これにてミッションコンプリート!

 さあ、家に帰って祝杯の準備だ!


「待ちなさい」


 と思ったが、フォトがさっきとは真逆の厳しい声。

 僕はビクリと身を震わせた。


「最後にまだ重大なお仕事が残っていますよ?」


 恐る恐るフォトの顔を見ると、彼女は射殺すような真っ直ぐな琥珀色の瞳で僕を見ていた。


「ルールをお忘れですか? 怪盗は、一度は観客に姿を見せて、を言わなければならないのです。決め台詞を終えるまでが怪盗です」


「うぐ……」


 くそ! やっぱり覚えていたか!

 その場のノリで逃げられると思ったのに!


「ダ、ダメだ。そんなの絶対に無理だ! 失敗するに決まっている! もう終わりだ!」


「急にヘタレた!? さっきまでのかっこ良さはどこへ行ったのですか! 大丈夫、ここまでうまくいったのですからきっと成功します。ちょっと喋って帰るだけです」


 不安そうにする僕を宥めるような口調のフォト。

 そうは言っても無理なものは無理だ。


「安心してください。もし仮に失敗しても、私にはがあります」


 切り札?

 何か作戦でもあるのだろうか。

 彼女がうまくフォローでもしてくれるのか?


 だったら、それに期待してもいいかもしれない。

 こんな時のパートナーである。


「さあ、参りましょう。ちょうどこの窓から屋上へ行けます」


「…………分かったよ」


 ルールなのだし、やるしかないか。

 僕にとっての最大の難関が今始まる。

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