第12話 コミュ障は写真撮影が苦手です

(さて、それでは宝石の場所まで案内しますね)


 フォトの案内に従って屋敷内を進んでいく。


 内部は高価な壺が置いてあったり、西洋の鎧が飾ってあり、中々凝っている。


 主人の趣味なのだろうか。

 当然ながら屋敷内にも警察はいる。


 僕は見つからないように、障害物や曲がり角の手前で隠れながら高速で移動する。


 本当にゲームと同じような動きが可能らしい。

 いい感じの進行速度だ。


 僕のステルス力を全開にして隠れたら、このレベルの警察なら恐らく目の前を通り過ぎても気付かれないだろう。


(へえ。やるじゃないですか。さすがと言っておきましょうか)


(これくらいなら楽勝だね。多分、一回も見つからずにお宝までいけるよ)


(まあ、難易度がなので、マスターの腕前なら当然といった所でしょうかね)


(ああ、ランクもゲームと同じなんだね)


 ゲームでも難易度によってAからEまでランクがあった。

 この部分でも共通点があるらしい。


(それにしても凄いステルス力ですね。マスターは普段から誰にも認知されないのですか?)


(そうでもないよ。話しかけられる事だってある)


 前に姫咲さんに話しかけられたのが例だ。


 彼女のように目線が広い人間なら、僕のステルスでも突破される可能性は高い。


 過度な油断は禁物というわけだ。


(それにしても、ずいぶんと監視カメラが多いね)


 ゲームでも監視カメラはあるが、それでもEランクとしては異常ともいえる多さだ。


 僕はまだ引っかかっていないだろうが、普通の人なら確実に見つかるぞ。


(カメラに関してはちょっとくらい引っかかっても大丈夫です。数が多すぎる為、監視している人間も全てを把握できていませんからね)


(それ、監視カメラの意味あるの?)


(一番の目的は怪盗の姿を映す事です。実はこの監視カメラ、観客にも映像として映し出されているのです。観客はその中から怪盗を探して楽しむというわけですね)


 そういう事か。

 確かに怪盗が屋敷に入ったら、外の人達は退屈だもんな。


 監視の為というより、観客の為に作られたカメラというわけだ。

 よく考えられている。


(怪盗によっては、わざとカメラの前でポーズをとってサービスをする人もいるみたいですよ。マスターもやってみますか?)


(嫌だよ。そんなことをして、見つかったら馬鹿じゃないか)


 それ以前に僕自身があまりカメラに写りたくないというのもある。


 コミュ障は写真とかも苦手なのだ。

 記念写真の類は、いつもどんな顔をしたらいいのか分からない。

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