第11話 最強のステルス怪盗!?

『さあ! 時間が近くなってきました。まもなく怪盗と警察の戦いが始まります!』


 実況の声が大きく響き渡る。

 そろそろ予告時間となるようだ。

 ついにその時がやってきた。


「マスター。いよいよ始まりますよ。心の準備は出来ていますか?」


「そうだね。少し楽しみになって来たよ」


 目を閉じる。

 今でも現実味を帯びていないが、それでも怪盗行為自体は僕の好きなゲームと同じである。

 そう思えばワクワクしてきたかもしれない。


「ふふ、いい反応です。大丈夫、を信じなさい」


「最強……ね。本当に期待しているからね?」


 僕に怪盗の才能がある。

 それが本当なのか、それとも嘘か。

 今回で判明するだろう。


『時間です! 怪盗VS警察。果たして今回勝つのは我らが新人怪盗なのか? はたまた警察なのか? ライブスタート!』


 ついに時間となったようだ。

 同時にフォトが僕の懐へと入る。


「よし、ではマスター。行きましょう!」


「まずは屋敷に潜入すればいいんだよね?」


「はい! 警察の目を盗んで、見つからないようにするのです。タイミングが大事ですよ!」


 怪盗らしくこっそり行くのが重要らしい。

 目立ってはいけない。


 でも、なんだろう。

 謎の直感が僕を支配していた。

 それは自信とも言える感覚だ。


 

 そんな確信めいた直感だった。


 僕はその直感に従って、ビルから飛び降り、正面から建物へ歩いていく。


 入り口には仁王立ちしている警察。

 普通ならここで気付かれてしまう。


(え? ちょ……マスター? そんなタイミングだと見つかりますよ!?)


 当然ながら戸惑うフォト。

 言葉を出せば気付かれてしまう為、脳内で僕に注意を送る。


 だが、それでも僕は注意を無視。

 警察に向かって歩みを止めなかった。


 そのまま僕は警察の横を通り過ぎ、入り口の扉を開けて中へと入った。


(えええええ!? なんであれで見つからないの!?!?!?)


 脳内にフォトの驚愕の声が聞こえてくる。

 当然の反応かもしれない。


(マスター、あなたはどんなトリックを使ったのですか?)


(なんて言えばいいかな。僕は存在感が無いから、それで行けると思ったんだ)


 あまりにも無謀な戦法だったかもしれないが、なぜか絶対に成功する確信があった。


(そうか! ! マスターは元々存在感が無かった。それが怪盗となることで数十倍に強化された結果、尋常でないステルス力を発揮したのです!)


 ステルス。

 怪盗になることで僕のが何十倍にも強化された。


 それは僕のも例外ではなかったらしい。


 普段から僕は誰にも気づかれない。


 それが何十倍にも強化されたのなら、例え真横にいても気付かれないほどの強力なステルス能力となる。


 僕はその力を無意識で理解していた。


(ふふ、これは素晴らしいです。怪盗としてこれほど有利な能力はありません。やはりマスターには才能があったという事です)


 フォトの言葉から察するに、これはかなり強力な能力らしい。

 それは僕としても同意だ。


(なるほど。これほどの能力を誇るマスターが、どうして今まで誰からもスカウトされなかったのか、その理由が分かりました。その存在感の無さで誰も気が付けなかったのです)


(そういえば、僕はなぜかゲーム内でも、異常に存在感が無かったからね)


 考えてみると、いくらコミュ障でも『誰にも誘われない』というのは異常だ。


 誘われたら簡単にチームに入れるので、ゲーム内でもぼっちになるのは、本来ならありえないはずだった。


 信じられない話だが、僕の能力はゲームにすら影響を及ぼすものだったらしい。


(まあ、私は逆に目立たないようなレアな人間を見つけるのが大好きなんですけどね。マスターを発見した時の喜びは至福でございました)


 うっとりとした表情のフォト。

 人間をレア扱いするのはロボットとしてどうなのだろうと思いつつも、フォトが僕をスカウトできた理由は分かった。


 そういった物珍しい人間を見つけるのが好きな場合や、よほど集中して僕を探知した場合は認識できるみたいだ。


(これからは珍獣ハンターのフォトちゃんと呼んでください)


(……マスターを珍獣扱いするなよ)

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