第6話 奏多、三分クッキング!

「ほんとうにモンスターを使って料理をするんですか?」

「もちろん。ちょっと待ってて、すぐ準備するから」


 俺は近場にいたスライムとオークを二体程屠り料理に使えそうな部分をむしり取る。


「これでよし!」


 料理に必要なアイテムを片っ端からリアライズしていく

 包丁は……村正があるしいいか。


「さぁ、これから3分でこのモンスターたちを美味しく調理していきます~」


 俺はスマホに向かって高らかと喋り出した。


"カナタのクッキングチャンネル始まってて草"

"戦闘だけじゃなくて料理もできるとかスペック高すぎだろ!"

"これはモテるな"

"やっぱり器用じゃないと刀って扱えないのかなぁ"

"っていうかスライムとオークで何を作る訳?"


 コメントが盛り上がっている。


 俺は村正でオークの肉を一口サイズに切っていく、

 それをフライパンにいれ塩コショウで味付けをして焼く。


"手際よくて草"

"奏多ママ!"

"村正包丁代わりに使っていいのか……便利ではあるが"

"まずモンスターを食べるって発想には至らないんだよな"


「あとはスライムを氷結魔法で冷やしてと……」


 スライムのぷるぷるとした部分は寒天のような食感が味わえるのが特徴だ。

 冷やし終えたらオークの血をあんみつ代わりにかけて完成。


「よしっ! オークのシチューとスライム寒天の完成だ!」


 俺はスマホに向かって微笑む。

 どうだ、俺が戦闘だけの脳筋だとおもったら大間違いだ。


"めっちゃ笑顔で笑うわ"

"これって食べて大丈夫なやつなん?"

"オークの生き血はむりだわ"

"これいちおう切り抜いとくか"

"見た目は美味しそうだけど、素材がなぁ……"

"っていうか、スキルで食材を現実化リアライズしたほうがよかったんじゃね?"


「はい、これ芽衣の分。たくさん作ったから召し上がれ」

「えっ!? あっ……はい……」

「どうした? さっきから顔が真っ青だぞ」

「あっ……なんでもないです! あははっ……あぁ……」


"芽衣ちゃんの顔、真っ青だ"

"可愛い子がモンスターを食べる瞬間。なんか興奮する"

"切り抜き不可避"

"キモい奴いて草"

"芽衣ちゃん汗すごいな"


「いっ、いただきます!」


 芽衣は両手を合わせオークのシチューを口に運んでいった。

 すると――


「あれ? 美味しい……。これ本当にオークのお肉なんですか?」

「そうだよ。あんまり知られてないけど、オークのむね肉は癖がなくて食べやすいんだ」

「す、すごいです! こんな美味しいの食べたことないです!」


 芽衣の顔がみるみる明るくなっていくのが分かる。

 上手く料理すればモンスターも立派な食材になるということが今回の配信で伝えられれば満足だ。


「このスライムの寒天もぷりぷりしてて美味しい~♪! オークの血をかけると元気が漲ってくる感じがします!」

「スライムは低ランクモンスターだけど、食材としての応用力はすごいんだぞ。こんな風にデザートとしても使えるし、工夫すれば茶碗蒸しみたいにすることだってできる。オークの生き血は滋養強壮や美容にも効果があるから女性におすすめだよ」


 俺は芽衣に説明口調で答えた。


「えー! お肌すべすべになるんですね! すごいです~!」


 芽衣は笑顔でモンスターたちを胃袋へと納めていく。


「今回は低ランクのモンスターを使った料理なので探検家ならほとんどの人が実践できると思います。良かったらお試しください~」


 俺はスマホに向かって微笑んだ。

 これでバッチリ。


"料理配信上手くて草"

"料理チャンネル作ったほうがいいじゃないか?"

"これで女性リスナーも引き寄せていくわけか……奏多恐るべし"

"美味しいのか……"

"今度家でやってみよう"

"家じゃできないだろwww"

"また料理配信してください~"


 コメントに目を通す。

 突発でやってみたけど料理配信は意外と好評だった。


 すると、芽衣がおもむろに口を開いた。


「奏多さんっていったい何者なんですか?」

「何者って普通の探検家だけど……」


「いえ、おかしいです! 最近探検家になったばっかりだって配信で言ってましたけど、ワイバーンやガーゴイルを軽々と倒しちゃうなんて普通なら考えられません! それにモンスターを料理しようとする発想もおかしいです!」


 芽衣は勢いよく俺に詰め寄ってくる。

 そんなに俺のことが気になるのか……。


"たしかに気になる!"

"芽衣ちゃんいいこと言った!"

"そうだよな!規格外のことが起こりすぎて常識を忘れてたわ"

"たしかにおかしい!"

"奏多の強さの秘密がいま明らかに……!?"

"wiki作るわ"


 視聴者も気になってるようだしいい機会か……。


「俺には師匠がいてさ……戦い方はその人から教わったんだ」

「奏多さんの師匠……いったいどんな方なんですか?」

「話せば長くなるんだけど……」


 俺は昔の出来事を思い出すかのように語り出だすのだった。

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