第4話 奏多、ワイバーンと戦う
"初見、Dランク探検家がワイバーンに挑むと聞いてきました"
"めちゃくちゃ同接増えてて草。もう五万人突破してるぞ"
"おっ、マジでワイバーンだ"
"これ本物なの?"
"カナタちゃんねるとかダサすぎて草。もう少しましな名前なかったのかよ"
"どうせ釣りだろ?"
"いまどんな感じー?"
先ほどから同時接続数がとんでもないことになっているが恐らくバグだろう。
Dランク探検家の配信をわざわざ見ようとする人なんているわけがない。
「あっ、えーっと。よかったらチャンネル登録お願いします! いまからこのワイバーンを討伐するので、最後まで観ていってね!」
次の瞬間、ワイバーンはその鋭い爪を俺に向けて繰り出してきた。
『ガルゥゥゥゥゥゥ!!!』
俺はすぐさま村正でその攻撃を防ぐ、少し後ずさりはしたが、身体は問題ない。
「今話してる途中なんだけどな……ちょっとは空気を呼んでくれないか?」
『ガルゥ?』
ワイバーンは素っ頓狂な声を上げた。
無理もないだろう。今まで数多くの探検家を屠ってきた攻撃を片手で防がれたのだ。
"ふぁ!?"
"片手で防いでて草"
"ワイバーンめちゃくちゃ焦ってない?"
"汗かいてて草"
"マジかよこいつ……ほんとうにDランクなの?"
"さ、さすがに合成だよな?"
"そろそろ認めようぜ、こいつ本物だわ"
俺はすぐさまそれを振り払う。
『グルゥ!?』
すると、ワイバーンの体勢が崩れ大きな音を立てながら壁へと叩きつけられる。
「あれ? 振り払っただけなんだけど、少し強かったか?」
ワイバーンはすぐさま体勢を立て直し、その鋭い牙で俺をかみ砕こうとしてくる。
あの牙でいったい何人の探検家がやられたのだろうか。
『ガルウウウウウウウウウウウ』
普通なら軽快にかわすところだが、一つあることを閃く。
「そうだ、いいこと思いついた」
このまま普通に倒しては面白くない。みんながやらないことをやってこそ配信者だ。
そう思った俺はおもむろにスマホを手に取り、笑顔で視聴者に向けて語り掛ける。
「えー、視聴者の皆さん。いまからワイバーンに食べられてみたいと思いまーす」
ワイバーンの口が開かれた次の瞬間――。
ゴクリ。
俺は飛び込むようにワイバーンの腹の中へと滑り落ちていった。
"ぎゃああああああああああああああああああ"
"食われたああああああああああああああああ"
"あっ、終わったわ"
"そんなもの見たくねーわ!"
"マジで食われたああああ"
"完全にあたまいかれてて草"
軽快に着地しスマホの電気を照らす。
「これがワイバーンの腹の中か……思ったより綺麗だな」
先ほどと同様に探検家の屍があるだけだ。
俺はスマホで360度回転させながらワイバーンのお腹の中を撮り続けた。
「さてと、この後はどうしようかな……腹の中と言ってもモンスターが潜んでるわけでもないしなぁ」
すると、ジュワーと音を立てて、履いていた靴や服が溶け始めた。
"おい!お前溶けてるぞ!"
"放送事故!放送事故!"
"早く抜け出さないと!"
"お前これどうすんの?"
"たしかワイバーンの腹の中って入ったら最後。排泄されるまで出れないって話だけど"
"マジで?じゃあ終わったわ"
もう少しこの中を探検したかったがそうもいかないみたいだ。
俺はこのまま数時間は耐えられる体だからいいがカメラと衣服はそうはいかない。さすがに初配信で裸体を晒すわけにはいかないからな。
「よっと!」
すぐさま村正で傷をいれようとしたがカキンっと金属音が響きわたる。
まるでダイヤモンドのように硬い。
「思ったよりワイバーンの腹の中って硬くできてるんだなあ……。う~んどうしたもんか」
これは『
あんまりスキルを使いたくなかったんだがこの際仕方がない。
「えーっと、どうやらスキルを使わないとここから出れないみたいなので、いまから俺のスキルを紹介したいと思います」
"Dランクのスキルって大体戦闘じゃ使えないスキルばっかりだけど大丈夫?"
"もしかしたら凄いスキルかもしれないよ"
"おっ! カナタのスキル気になる"
"これはwktk"
"気になる! 教えて! 教えて!"
"やっときたかスキルはよ"
俺はトロールを倒した時のように抜刀の構えを取る。
先ほどと違うのは俺がスキルを使うこと。
「
『強く妄想する。どんなものでも突き破るイメージ』
ふぅ~っと、深呼吸をする。
すると、白い蒸気のようなオーラが村正を包みこむ。
「抜刀――――
閃光が
先ほどとは違い。剣戟が弾かれることはなかった。
そして、次の瞬間――。
ワイバーンの腹の肉が切り裂かれた。
『グォオオオオオオオオオオオオオオ』
ワイバーンが苦痛に満ちたうめき声をあげる最中。
俺は一回転しながら、体勢を立て直す。
"マジかよ!"
"もう何をされても驚かなくなってしまった……"
"カナタってなにものなの?"
"分からん、プロフィールにはしっかりDランクって書かれてるし視聴率稼ぎが目的ではなさそうだけど"
"いや、こいつマジでどうなってんの?どうしてダンジョン委員会はこいつの能力に気づけなかったわけ?"
「よっ! 脱出成功っと!」
俺は余裕の表情を浮かべながら微笑むのだった。
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