第231話 不死王に修理してもらう

改めて訊かれてみると、リューとヴェラ、二人の関係は、何なのだろうか? 一応、依頼があれば受けるつもりではいるが、考えてみれば、なんとなく旅を始めただけで、パーティ登録もしていない。


いろいろなゴタゴタに巻き込まれるが、ほとんどがリューの問題で、ほとんどリュー一人で片付けている。特に戦闘関係ではリュー一人で全て処理している。


「…一応、パーティを組んでいる事になる、のか、な? 依頼を受けたら手伝ってもらう事もあるだろうしな」


「そう言えば、ギルドにパーティ登録とかしてないわね。一緒に依頼を受けた事も今の所ないし…」


「ロンダリアで一度一緒にダンジョンに潜ったじゃないか?」


「あの時は私は案内だけ、結局最後まで私は見てただけだったしね…………戦闘はほぼリューにお任せで、私、パーティというより旅行の同伴者に近い感じ? そうね、私はリューの傍観者と言ったほうがしっくり来ちゃう状況ね」


そう言ってヴェラは笑った。


「まぁそれでもいいんじゃないか? 一応、パーティの戦闘担当とそれ以外担当って事で」


「一応、後でちゃんとパーティ登録しておこうか?」


「どちらでもいいぞ。単に旅の道連れって事で、冒険者としての活動は別って事でも構わない。俺は色々と厄介事に巻き込まれる事があるんでな」


「そうね、見てて飽きないわ」(笑)


「二人は……、恋人同士なのかい?」


「いや、そういう関係はない」


「そうね、放っておけない感じだけど、恋愛って感じじゃぁないのよねぇ」


「そうか、微妙な関係っぽいね…… “まだ” 微妙な距離感の頃合いという感じか、お邪魔しちゃぁ悪いかな?」


「まだ?」


正直、リューはあまり恋愛感情に振り回されるという気配がない。竜人の肉体を持ってしまった影響なのだろう。魂の中身は人族の男なので、美しい女性に惹かれるのは同じなのだが、肉体的な強い性欲が沸いてきて制御できず暴走してしまうというような事はないのだ。そしておそらくヴェラも……?


実は、ヴェラが人間でない事に、リューはかなり早い段階で気づいていた。先程も口を滑らしていたし、パーティとして活動するなら、そろそろちゃんと話をしておいたほうがいいだろうかとリューは思った。


その時、受付嬢ピンコがギルドマスター・ブラギエフが目を覚ましたのでもう一度来てくれと呼びに来た。




   *  *  *  *




「ああ、二人とも、スマナカッタネ」


「なんか真っ白にヤツレているが、大丈夫か? 測定器の件で上に怒られるのか?」


「ああ……ギルド本部から支給されている品だからな、目ン玉飛び出るような金額のモノだ。きっと大目玉を食らうだろうなぁ……」


「言っておくが俺は弁償しないぞ?」


「いいや、逃さないぞ? まぁ弁償はしなくてもいいが、ただ壊しましたで済まされんのだ。原因はちゃんと報告はさせてもらう。本部も、コレを破壊するほどの強力な魔法使いが現れたとなれば、壊した事は不問にしてくれるはず……」


「なんだか面倒な事になりそうな予感がするんだが……


…そうだ、知り合いに凄腕の魔導具製作者が居るので、測定器を修理してもらえないか頼んでみようか?」


「何、本当か?! 直せるなら是非頼む!」


「ちょっとマスター、そんな誰とも分からない人物に勝手にそんな高価な魔道具を渡して大丈夫なんですか?!」


「構わん、どうせもう壊れているのだ、これ以上悪い状態にはなりようがないのだからな」


「そ、そう言われればそうですが……でも、修理費が高いんじゃないですか?」


「ああ、多分修理費は要らないんじゃないかな? もう修理に入ってくれてるようだ」


一瞬、リューが何を言ってるのか分からないブラギとピンコであったが、ふと見れば、机の上に置いてあったはずの壊れた測定器が姿を消していた。


不死王はリューの人生を観察していると言っていた。何らかの空間魔法を使って見ているのだろう。さすがに二十四時間見張り続けているほど暇ではないはずだが、たまたま見ていて、すぐに動いてくれたようだ。


(自分のプライバシーは? という思いが一瞬リューの脳裏を過るが、自分で許可してしまったのだから仕方ない。その代わり色々助力してくれる、ウィンウィンの関係なのだから。そもそも不死王に見られて困る事も何もない。そもそも不死王は人間とは違う存在なのだから……気にしない事にするリューであった。)


「…いつの間に? どこ行った?」


リューは通信機を取り出して不死王に連絡してみた。


「もうできたぞい」


通話が繋がったと同時に不死王の声が聞こえた。ふと見ると、机の上にいつの間にか測定器が戻っている。


「おお? いつの間に?!」


転移で回収・返却を行っているのだろうが、認識阻害も掛けられているのだろう、見事な手並みである、さすが不死王。


「直ってます、ちゃんと動きますよ、凄い!」


ピンコが自分の手を乗せて水晶玉が光るのを確認した。


「この程度、報酬はいらんぞ。修理するついでに、改良しておいてやった。リミッターを入れておいたから、今後は壊れる事はないじゃろう。試してみるが良い」


礼を言って通話を切ったリューは、もう一度測定器に魔力を注いでみた。すると、水晶玉は眩い光を放ったが、今度は壊れる前に光が消えた。


「数値は……やっぱり999999999を示していますね。でも、今回は壊れていません。てか、数値が異常ですけど」


「直ったのは有り難いが、その魔道具師も、ちょっと問題なんだが……?」


「ああ、その人物については一切秘密で頼む。紹介もできないし、依頼も受けつけない。俺も彼については何も話す気はない。


……もし、余計なことを漏らしたら、命の保障はしない。その人物は簡単に測定器を直した通り、とてつもない人物だ。戦闘力でも俺より強い。そんな人物を怒らせると、何が起きるか分からないからな?」


「お前より……?」


「その人物を怒らせると、簡単に国が滅ぶ」


「そこまでかよ……」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


ランクアップさせてやろうじゃないか!


乞うご期待!



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