第133話 公爵の騎士 vs リュージーン
「では」
掛かってこいというローダンの言葉を受けて、リューが素直に攻撃に移る。
その結果、次の瞬間にはローダンの左腕は二の腕から切り離されて宙を舞う事になったのであった。
「ロ、ローダン!!」
片腕を斬り落とされ、血が吹き出る。だが、ローダンはそれでも残った腕で剣を離さず構えを崩さない。意外と根性があるようだ。
リューはさらにローダンに近づいていく。
「もういい、止めろ!」
だがその声は僅かに遅く、リューの剣が再度振られた後であった。ローダンの残った腕が斬り飛ばされて床に落ちる。
リューは公爵のほうを見て、肩を竦めてみせた。
公爵はローダンに駆け寄ろうとするが、手を上げてそれを制したリューは、約束通りローダンの身体を元にもどしてやったのだった。
「凄いな、治癒魔法まで使えるとは。それも切断した腕を接合するなど……」
立ち上がり、よろよろと
「きぃさぁまぁ、息子によくも……! ワルド! お前がやれ! 殺しても構わんぞ!」
公爵の後ろに控えていた騎士が前に出てきた。
リューはレジルドの顔を見ながら言う。
「…殺しちゃっていいのか?」
「いや、できれば、命までは……」
「安心しろ、命までは取らないさ。だが、先程と同じ様に行くとは思うなよ?」
ワルドが剣を抜いたので、リューも構えた。
「お前の力はもう見切った。なるほど、ローダン様程度の腕なら敵わんだろう。だが、その程度では私には通用しない」
リューは目の前の騎士も鑑定してみる。そのレベルは……
…なんと70!
これは大したものである。冒険者で言えばAランク、それもトップクラスの実力だろう。
「ワルドなら! やっちまえ!」
「ワルドは剣聖にも優る実力の持ち主だからな」
その言葉を受けてワルドはレイナードに向かって言った。
「この男を片付けたら、私とお手合わせ願えませんかな? 剣聖を倒して、私がその名を継いで差し上げましょう」
「必要ない。俺は以前、そこに居るリューと戦って負けた。もしリューに勝てるのなら、剣聖の名はお前にやろう」
「なんと!」
ワルドは目を見開き、リューのほうに向き直った。
「こんな奴に負けただと? 剣聖というのは、存外、大したレベルではなかったようですな。いいでしょう、剣聖の名は私が立派に継いでいきますから安心めされよ」
ワルドは、一気に踏み込みリューに斬りかかっていった。剣で受け止めるリュー。
なかなかの高速の斬り込みであった。並の剣士なら一刀両断されているだろう。
だが、相手の実力を確認して油断はできないと悟り、リューは既に
「ほう、よくぞ受け止めたな。思ったよりやるようだ」
「ふん」
リューが反撃を放つ。だが、余裕の表情で受け止めるワルド。
そこから二人の剣が何度か激しく交わる。
だが、リューの攻撃が徐々に速度を増していく。それにつれ、ワルドの動きが遅れを取り始め、やがて防戦一方になっていく。
ワルドの顔が徐々に青くなっていた。
「く……これは?! 先程は力を隠していたか!」
ローダンごときに本気の実力を見せているわけはないのであるが……。
なんとかリューの攻撃を防いでいたワルドであったが、上昇し続けるリューの速度についについていけなくなり、リューに剣を弾き飛ばされてしまった。
ワルドの眼前に剣を突きつけるリュー。
「ワルド! 何をしておる!!」
「もう一度やってみるか?」
「くそっ!」
床に落ちた剣を拾い、再びリューに斬りかかっていくワルド。
だが、リューの速度は先程よりさらに上がっている。
もはやワルドについていける速度ではなかった。何度やっても剣を弾き飛ばされ剣を突き付けられる事を繰り返してしまう。
さらにリューの速度は上がり続け、ついにはワルドはリューの姿を見失ってしまう。
気が付けば、両腕を斬り飛ばされ、首筋に剣を突き付けられた状態でワルドは膝を突いていた。
「信じられん……ワルドが負けるなど……」
「剣聖が負けたというのは本当だったのか……?」
ワルドの体も治療してやるリュー。
「リュージーンと言ったな、貴様、速度を可変できるのか……」
「はっきり言うが、
それを聞いてガックリ両手を突くワルドであった。
― ― ― ― ― ― ― ―
次回予告
リュージーン、追放される?
乞うご期待!
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