第110話 ソフィと再会

リューは、バンクスに依頼者が誰か問い質した時、神眼でバンクスの脳裏に浮かんだ情報を読み取っていた。


だが、依頼を持ってきた人物がギルという名前である事は分かったが、そこに浮かんだ顔は、リューの知らない顔であった。


そこで、リューは話しながらさらに深くバンクスの心の中の情報を探ってみたのだが、王宮からの依頼である事は確かなのだが、ギルについての詳しい情報はバンクスもほとんど知らなかったのだ。


やはり、王宮に乗り込まなければ分からないか。


そう言えばソフィはどうしたのだ? 王都に戻ると言って別れて以来、音沙汰がない。すぐに戻ると言っていたが、捜査に来た王宮騎士団はソフィ王女からの証言など聞いていないと言っていた。何かあったのだろうか?


少し王都を観光して気が緩んでしまっていたリューであったが、いよいよ王城へ乗り込む気になったのであった。


実は、少し面倒くさくなって、さっさと用件を片付けて、もう少し他の場所も見てみたいと思うようになった事も大きかったのだが。




  *  *  *  *




王城は、王都の中心にあった。


堀に囲まれており、橋の手前と渡った先にも衛兵が居る。


リューは、王城の門の正面に立ち、神眼を発動して王城の内部を探った。


王城の内部構造を記憶すると同時に、ソフィの気配を探す。


発見した。


だがその時、衛兵が近づいてきた。

その時リューは王城の前に仁王立ちしている不審人物だったので、当然であったが。


「おいお前、そこで何をしている!」


王城の真ん前で堂々と神眼で内部に探りを入れていたリュー。


王都に来た観光客が王城を見に来る事はよくあるが、リューの挙動は観光客とは違った雰囲気を感じた衛兵が、一応確認しに来たのだ。


転移で城に(ソフィの居る場所に)侵入してしまおうかと考えていたリューだったが、ダメ元で一応、衛兵に


「ソフィ王女に会いたい。取り次いでくれるか?」


と訊ねてみた。


「何を言っている、お前のような得体の知れない者が王女に会えるわけないだろうが。帰れ帰れ」


「リュージーンが来たと王女に伝えてくれ、そうすれば分かるはずだ」


「お前のように王女に会わせろって奴は時々来るんだよ。その度にいちいちお伺いを立ててたら俺達が怒られてしまう」


「訊くだけきいてみたほうがいいんじゃないか? 後でなんで知らせなかったと怒られる事になるぞ?」


「しつこい奴だな、力づくで追い払われないと分からんか」


「待て」


だが、そこにもうひとりの衛兵が出て来て言った。


「お前、名前は?」


「リュージーンだ」


「そうか、少し待て。一応念の為、確認してくる」


そして、しばらくして、奥に引っ込んだ衛兵が戻ってきて言った。


「王女がお会いになるそうだ。ついてこい」


リューがほれ見た事かとドヤ顔で最初の衛兵を見るが、衛兵は無表情のまま配置に戻って行っただけだった。


堀を渡り、城門を抜けるリュー。


だがそこで、リューは大勢の騎士達に囲まれた。


「やれやれ、罠か」


城の中から一人の男が出てきた。


その男の顔は、バンクスの脳裏に浮かんだギルであった。


「お前がリュージーンか?」


「お前はギルだな? 冒険者ギルドに俺の捕縛依頼をだしていたようだが、理由を聞かせてもらおうか?」


リューがギルを知っていた事に一瞬動揺をみせたギルであったが、すぐに気を取り直して言った。


「お前がリュージーンで間違いないようだな。お前がここに居るということは依頼は失敗したのだな。しょせん、冒険者など当てにならんな」


ギルは吐き捨てるように言うと、さらに声を張って言った。


「お前にはギット子爵殺害の容疑が掛かっている! 自分から出頭してくるとは良い心がけだ! 大人しくお縄につくが良い!」


「ギット子爵はソフィ王女を殺そうとしたのだぞ? 王女に聞いていないのか?」


「申し開きは裁判でするがよい。抵抗するなら痛い目を見る事になるぞ?」


槍を構え包囲を狭めてくる騎士達。


「ソフィ王女はどうした? 王女に会わせてくれ」


「お前のような平民が王女にお目通りなど許されるわけがなかろう。捕らえろ!」


だが、その瞬間、リューを取り囲んでいた兵士達は意識を失い一斉に倒れた。


「貴様、何をした……?」


リューが空間魔法で頸動脈の血流を一時的に止めたのである。脳への血流が止められると人間は数秒で意識を失ってしまう。


「俺を捕らえる事などできんと言う事だ。ソフィはどこだ?」


「ええい、出合え、出合え!曲者だ!!」


「おやめなさい!」


そこに突然、城の中からソフィ王女が現れた。


「王女、お出になられては危険です!」


「何も危険はありません、その者は私の知り合いです。それとも、私の客に失礼な態度を取る気ですか?」


「いや、それは……」


「下がりなさい。リュー、お久しぶりです、よく来てくれました。中に入ってお茶でも飲んで行って下さい」


そう言うとソフィは城の中に入っていってしまった。


代わりにメイドが出てきてリューを中に誘う。


そのメイドはリューの知らない顔であった。マリー・ベティ・アリスの三人はどうしたのだろうか? てっきり王女と一緒に居るとリューは思っていたので少し不思議に思ったが、王宮のしきたりはよく知らないのでそんなものかと流した。


ギルが睨みつけているが、ギルの魔力の特徴は覚えた。奴を捕らえて〆るのはいつでもできる。今はソフィが気になったのでリューは城の中に入る事にした。


    ・ 

    ・ 

    ・ 


豪華な応接室のようなところに通され、お茶の用意が終わった所でソフィ王女が入ってきた。


「リュージーン、久しぶりです」



― ― ― ― ― ― ― ―


次回予告


裁判に掛けられる事になったリュー


乞うご期待!



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