第92話 冒険者への依頼 リューを捕まえろ
結局、
突然景色が変わり、自分達がどこに居るのか理解できないまま、周囲にトロールやサイクロプスが現れ交戦状態となり。
そこがダンジョンの中であるとようやく理解し、襲ってくる魔物を排除しながら階層を登ってダンジョンから脱出。
出た場所がどこなのかも分からず彷徨っていた所、通りがかりの冒険者を発見。
街の方向を聞き、大金を払って冒険者の達の持っていた食料を分けてもらい、なんとか帰ってきたが、そこまでに数日を要してしまった。
とは言え、そんな訳の分からない状況から、一人も欠ける事なく無事に帰ってきたのは、騎士達がかなり優秀であったからとは言える。ボロボロの格好からはかなりの苦労があった事が偲ばれるが。
とりあえず宿に戻り休む事ができた騎士達。
だが、一息つくと怒りが沸いてきた。これはリュージーンの仕業である事は明白である。
転移魔法は失われて久しいが、ダンジョンなどに時折転移トラップが出現する事はあったので、どうやったかは分からないが、何らかの魔道具で罠を張ったのだろうと推測。怒りを持って翌朝、再びリューの家に押しかけてきたのであった。
「生きて帰ってきたか。予想通り優秀だな。でもまた行きたいなんて、奇特だなぁ。あ、レベル上げか!?」
「リュージーンよ、よくも怪しげな罠で我々をダンジョンへ飛ばしてくれたな! ただで済むと思……」
だがその時既に騎士達の足元には魔法陣が浮かんでいた。
騎士達はセリフを言い終える前に、ダンジョンの中に逆戻りしていたのであった……
問答無用で騎士達をダンジョンに飛ばすと、リューは再び寝床の戻って二度寝を始めたのだった。
* * * *
またしてもダンジョンの中に転移してしまった騎士達
おそらく転移トラップのような仕掛けは気軽に何度もは使用できないだろうと踏んでいたのだが、その判断を後悔する事となってしまった。
ショックが大きかった騎士達だったが、前回とは違い、場所と状況が
そして、三度目の訪問。
またダンジョンに飛ばされるのを嫌がった騎士達は反対したのだが、騎士達のリーダーに仕事なので仕方がないと叱咤され、渋々、騎士たちはリューの元へ向かったのであった……
リューが騎士達の顔を見た瞬間に、即座に足元に魔法陣が浮かぶ。それを見た瞬間、騎士達は慌てふためいて逃げ出そうと走り出す。だが、魔法陣は自分の足元にピッタリくっついて移動してくる。
騎士のリーダーは慌てて叫んだ。
「待て! もうちゃいほしねい!」
すると、魔法陣が足元から消え、騎士達は安堵した。
慌てすぎて噛んでしまった騎士長だったが、なんとかギリギリ、言いたい事はリューに伝わったようだ。
「チャイ…なんだって?」
伝わっていなかった。
だが、リューの興味を引く事には成功したのだった。
「も、もう、逮捕はしない!」
「いいんですか?」と騎士達は隊長に小声で尋ねたが、リーダーは
「…っ、冒険者リュージーンの事情聴取は済んだ。リュージーンの主張に従って、王女様に事情を尋ねてみる事にする」
と宣言した。
こうして、王宮騎士達はリューの逮捕を諦め、王都へと帰っていったのだった。
* * * *
それからしばらくして、冒険者ギルドのマスター、キャサリンがリューの家を訪ねてきた。なにやら緊急の話があると言う。
リューはしばらく冒険者ギルドに顔を出していなかったので、わざわざやってきたのであった。
アパートはリューの寝床があるだけの狭い部屋しかないため、外に出て話を聞くと言ったのだが、目立ちたくないとキャサリンは無理やり部屋の中で話を始めた。
曰く、王都の冒険者ギルドに、『ミムルに居るリュージーンという冒険者を捕らえよ』という依頼が入ったらしい。以前キャサリンは王都の冒険者ギルド本部に勤めていたが、その時親しかった人間が教えてくれたのだと言う。
思い当たるのはギット子爵の件しかない。とすると依頼者は王族・貴族の関係者だろう。ギット子爵は公爵家の四男だったそうだから、公爵かも知れない。
なるほど、王宮騎士団では捕らえられないと判断し、冒険者は冒険者に捕らえさせようというわけか。
王都に帰った騎士団がどのような報告をしたのか、ソフィ王女に事情を聞いたのか分からないが、結局どうあってもリューを捕らえて連れて来いという話になっているのは、王族・貴族の意地なのであろうか。
王都の冒険者ギルドはその依頼を受諾、所属している高ランク冒険者に依頼を出したらしい。
依頼を受けた冒険者は一人ではなく、しかも既に王都を発っているとの事。もしかしたらこの街に既に入って監視されているかも知れないと言う。それを警戒し、キャサリンは目立たないように訪ねてきてくれたのだった。
なぜそこまでキャサリンが気を使ったかというと、依頼された冒険者の中にSランクの冒険者が含まれているという噂があったためである。
キャサリンはリューの強さを知っている。おそらくAランクの冒険者一人が相手ならば問題ないだろう。
キャサリン自身も元Aランクの冒険者であったが、以前リューと模擬戦で対戦した時に歯が立たなかったのである。
だが、Aランクが複数居た場合どうなるか分からない。ましてやSランク冒険者となると話は別である。
Sランクというのは、全世界を探しても十数人しか居ない。Aランクが束になっても敵わないような人外の存在なのである。いかにリューが強かろうと、Sランクを相手にしたらどうなるか分からない。
もし、本当にSランク冒険者が来ているなら、リューの所在は既に見つかっているかも知れないが・・・
その予測はすぐに当たる事になった。
* * * *
その日の夕方、近所の食堂で食事をしていたリューの向かい側の席に一人の男が座ったのである。
「リュージーンだな? 俺はバット、王都から来たSランク冒険者だ」
「早速お出ましか」
「驚かないようだな、既に情報は入っているというわけか」
「食事中だ、話は後にしてくれるか? お前も食ったらどうだ?」
「そうだな」
バットは店員を呼ぶと、自分も食事を頼んで食べ始めたのであった。
リューはキャサリンの警告を受けてから、神眼を常時発動状態にしていた。目の前のバットと名乗る男についても当然鑑定する。
バットのレベルは108
さすがSランク(神級)である。
――――――――――――――――
※ランクとおよそのレベル一覧
F:初心者 (Lv3~15)
E:見習い (Lv10~25)
D:一人前 (Lv20~40)
C:ベテラン・凄腕 (Lv30~60)
B:達人 (Lv60~80)
A:人外 (Lv80~100)
S:神級 (Lv100~)
――――――――――――――――
Sランクの冒険者に依頼を出すためには、相当高額の報酬を用意する必要があったはずである。
Fランク冒険者を捕らえるのにSランクを派遣してくるとは、随分思い切った事をするものだとリューは思った。
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次回予告
リューの実力はSランクに通用するのか?
乞うご期待!
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