第14話 目覚めたルトさん
30分くらいで治療室から先生が出てきた。立ち上がって先生に様子を聞きに行く
「あの、ルトさんは・・」
「心臓の発作で意識を失っていたようです。命に別状はありません。何か持病があったとか知っていますか?」
「いえ、特に聞いていませんが。でもたまに胸のあたりを苦しそうに抑えていた時がありました。本人は隠していたようなので深くは聞いていません」
「そうですか。ありがとうございます。今点滴しているのでまもなく目が覚めると思いますよ。」
私は医者にお礼を言って、看護師さんの案内でルトさんが横たわるベッドに向かった。
その部屋は10人くらい入る大きな部屋だった。ルトさんは手前から3番目のベットに寝ているようだった、
ベッドは隣とはカーテンで仕切られているが、足元側は通路になっていて、何かあったらすぐにわかるようになっている。私はルトさんのベッドがあるところに入り、ルトさんの手をそっと握る。とりあえず、死ななくてよかった。そう思った。
ルトさんの手を握りながら、もう片方の手で心臓疾患についていろいろ調べてみる。
ド素人の私が見てもルトさんのそれが何なのかもちろんわからないけど、少しでも何かわかればと調べた。ルトさんの様子をうかがいながら10分ほど調べていたら、ルトさんが目を覚ました。
私はスマホをポケットにしまってルトさんの顔を見る。
「ルトさん?気分どうですか?」
「えり奈ちゃん?……ここは??」
ルトさんは顔をこちらに向ける。
「ここは病院です。ルトさん、図書館の2階で倒れていたんですよ。覚えていますか?」
「くるしくなったとこまでは覚えてる。ごめんね。迷惑かけちゃって」
「いえ、そんなことはないです。ルトさんが無事でよかったです。」
そこで私はルトさんと手をつないでいたことを思い出して、顔が赤くなる。
「はっ!す、す、すみません!!しんぱいでつい。。。」
ゆっくり手を放す。
「心配してくれてありがとう。」
そしてルトさんはいつもとは違う悲しげな顔で微笑む。そしてすぐに泣きそうな顔になってゆっくり話し始めた。
「ごめん、僕はいつかこうなるってわかっていたのに、ずっと言えなくて、えり奈ちゃんを巻き込んでしまう。わかっていたのに、僕は…」
ルトさんはその大きな瞳から小さなしずくを流す。
「気にしないで下さい!本当にルトさんがいなくならなくてよかったです」
ルトさんに枕元にあるティッシュを一枚とってわたす。
ちょっとしてルトさんが落ち着いたところで、先生がやってきた。
「ルトさん、ちょっとおはなししてもいいですか?」
「はい」
「あ、あの私いったん外しましょうか」荷物に手を伸ばす。
「ううん、えり奈ちゃんもいて」
ルトさんが私の袖をつかむ。
「…わかりました」
私は浮かしかけた腰をまた椅子におろす。
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