第13話 突然の出来事

大学も冬休みに入り、町はすっかり年末モード。


大学ももちろん休みなので、今日は朝から図書館に行く。外に出ると雪がしんしんと降っていた。まだ地面がうっすらと白くなってきたくらいだけど、今日は一日降り続けるらしい。

昨日はクリスマスだった。一日遅れだけと、ささやかながらルトさんにクリスマスプレゼントも用意した。

いつも課題を手伝ってもらっているお礼の意味も込めてクッキーの詰め合わせを用意したのだ。クリスマスらしい絵柄のクッキーが10枚ほどはいっている。


 喜んでもらえるといいのだけどと思いながら転ばないように慎重に図書館に向かう。


私は図書館に入ったとたんに違和感を感じる。なんだかいつもより静かな気がした。いや、静かすぎる。いつも静かだけど、今日は嫌に音がないのが気になる。


「ルトさん、いますかー?」


返事はない。


私はルトさんを探してカウンターをのぞき込むけど、いないようだった。とすると2階の本棚か。2階の本は何が書いてあるのかよくわからないので、あまり行っていなかったが、階段を上ってルトを探す。


 階段を上って、2階にあがり、順番に本棚の間を探していく。


 5つ目の本棚に差し掛かった時、床にルトが倒れているのを見つけた。


「ルトさん!!」


駆け寄って倒れているルトさんの横にしゃがむ。ルトさんは床の上で足を曲げて横向きに横たわっており、両手は胸のあたりを抑えていたようだ。今は力なく床の上に置かれている。


いつも胸のあたりを抑えていたけど関係あるのかもしれない。


 「ルトさん!!聞こえますか!?」


 ルトさんの肩をたたいてみるが反応はない。顔を近づけてみると呼吸はしているみたいだった。


急いで、119に電話しなくちゃ。


震える手で電話をかけるとすぐに出る。


「救急車お願いします!人が倒れていて。。はい、場所は、えっと」


場所、そういえばここの住所はわからない。電話の向こうで電柱に書いてあることを教えてもらう。急いて外に出て電柱に書いてある住所を読み上げる。


住所を伝えてすぐにルトさんの元に戻る。


すぐに来てくれるそうだった。


その間私は、電話で教わった回復体位という姿勢にルトさんを動かす。もともと横に向いていたので、手を頭の下に入れるだけで済んだ。


とにかく呼吸もしているので近くで様子を見守る。


 1時間にも思えるくらい長い3分が過ぎ去り、救急車の音がする。外に出てここですと救急隊員に手を振り、倒れている場所まで案内する。ルトさんはそのまま救急車に乗せられていった。


私も付き添いとして乗車した。


 病院に着くとるとさんはそのまま治療室へ。私はその部屋の前のベンチで待機する。


待っている間、私はルトさんのことを考えていた。胸のあたりを抑える理由は今も知らないし、聞いていない。ルトさんとそのことについて話をしたこともなかった。


もしかして重い病気なのかもしれない。ルトさんはいつもあの図書館に一人でいるみたいだし、私にできることはないのかな。


それともほかの理由?もともと心臓の機能がよくないとか?私には医学的なことはよくわからないし、今ごちゃごちゃ考えても何も状況は変わらない。


私はあまり余計なことは考えないようにした。ルトさんが無事に元気になることを願う。


私は治療室の入り口を見つめて待っていた。

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