第11話 ルトさん

そのころ日本では。。。


私は今日も図書館で勉強をしていた。もう通い始めて2か月くらいたつ。

10月も半ば。そろそろ朝中は冷え込んでくる。


今はレポート課題を進めていて、ルトさんは2階で調べ物をしているようだった。


私は勉強の休憩に一息つきながら、向こう側の2階にいるルトさんをそっと眺めていた。


正直な話、私はルトさんが気になっていた。


かっこよくて優しくて、難しい大学の課題も教えられるくらいに頭もいい。

それに日本人顔だけど、白い髪がよく似合う美青年だ。


かっこいいな~。何やってても絵になるし。


今もただ梯子に腰かけて本を読んでいるだけなのに。その真剣な横顔がかっこいい。



しかし、一つ気になる点もある。それがルトさんは結構な頻度で本を落とすことだ。図書館はいつも私たちしかいなくてとても静かだし、本を落とすような音くらいなら遠くにいてもわかる。


一度や二度ならたまたまだと思っていただろう。

しかし、あまりにも頻度が多い。私が半日くらい図書館にいると一回は落としているんではないだろうか。


おっちょこちょいって感じもしないし、どうしたのだろうか。


しかし、わざわざ聞くのも違う気がして、知らないふりをしている。



そして今日、私はたまたま見かけてしまった。


ルトさんは2階の梯子の腰かけて、かたひざに本を載せて、メモを片手に何かを調べていた。


そんなルトさんを眺めていたら、ルトさんが突然胸のあたりをぎゅっと抑える。手の支えを失った本がルトさんの膝から床に落ちる。


ボトン。


私がいつも聞いていた本を落とす音。


ルトさんは胸をぎゅっと抑えながら、苦しそうに顔をゆがめている。


私は心配で駆けだしそうになったが、ルトさんは数秒で胸から手を放して、落とした本を拾う。そして何事もなかったかのように、また涼しい顔で調べ物を再開する。



私は見てはいけないものを見てしまったような気がして、またレポート作成を進める。


あの感じだと初めてではないのだろう。声を抑えている感じ、すぐに収まるのをしていたかのようだった。



もしかしてルトさんと初めて会ったとき、大量の本を落としていたのは、さっきみたく胸のあたりが苦しかかったからだろうか。


あれ以降も何度か胸を抑えているのを見かけた。本を整理しているときも、カウンターで寝ているときも。


でも私から聞くことはできず、ルトさんも私の前ではそんなそぶりを見せないようにしているみたいだったからそのことを私から聞くことはしなかった。


 それからもう一つ気になることが。


ルトさんはたまにすごく眠る日がある。はじめて数学を教えてもらった日もそうだったが本当にずっと寝ている日が2週間に一回くらいある。理由は全くわからない。


もしかして今胸を抑えていたのと関係があるのだろうか。なにか病気何かな。


そんなプライベートなことは聞けない。。。


私は心配を心の中にしまい込み、また目の前の課題に集中する。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る