第8話 図書館に差し込む光
不思議とこの青年が隣にいても悪い気はしなかった。
私はまた青年を起こさないように静かに課題を進める。消しゴムを使うときはなるべく彼から遠いところで、机を揺らさないようにしながら、黙々と課題を続ける。
彼に教えてもらったことを頼りに課題を進めると今まですごく時間がかかっていた数学の課題が、気が付いたら終わりそうだった。
しばらくして凝り固まった背中をほぐすように伸びをする。
隣で気持ちよさそうに眠る青年の寝顔を見る。長いまつ毛に白い肌。世間一般で見たらかなりのイケメンだろう。白髪なのもとても似合うおとなしそうな青年だ。
午後の暖かい太陽の光がすりガラスを通して青年のきれいな髪の毛を優しく照らす。
長いまつ毛が影になっている。
きれいだな。。。
思わずつぶやいてしまいそうになる。
いけないいけない!何見とれているんだ!
気を取り直して数学のの課題を進めて、気が付いたら日が傾いてきていた。
青年はたまに腕の位置を変えるためにもぞもぞとはしていたが、起きることはなく、ずっと寝ていた。いまは夕方のオレンジの光が優しく青年の髪の毛を照らし、長いまつ毛がそのきれいな肌にそっと影を落とす。
私はそろそろ帰ろうかなと思い、そっと荷物を片づけ始める。
その時、青年が物音で起きてしまった。
ゆっくり起き上がって眠そうに目をこすりながらあくびをする。
「あ、すみません、起こしてしまいましたか」
「ううん、大丈夫。数学出来た?」
まだ眠たそうな声で訪ねてきた。
「はい。ありがとうございました」
「よかった、またわかんなかったら遠慮なく聞いて」
青年はにこっと優しく微笑んで、席を立つ。
「はい、ありがとうございます。」
私は最後にお礼を言って、青年の背中を見送る。
青年はまだあくびをしていた。あんなに寝ていたのに、まだ眠いのかな。
私はカバンに荷物をしまって、立ち上がる。
カウンターの前を通った時、青年が私に声をかけてくれる。
「気を付けて帰ってね」
そういってにこにこっと手を振っている。なんだがそんな姿が少し子供っぽくてかわいいと思ってしまった。
私は笑って会釈をする。
「はい」
図書館を出て、きれいなオレンジ色の空を眺めながら家へと帰る。
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