第7話 数学の課題
私は図書館の奥に進んでいき、一番左端の席にすわる。
そして、やろうと持ってきた課題を広げる。今日はレポートを一つ仕上げなくてはならない。それから数学の課題も。レポートはすぐ終わるけど、数学のほうは難題だ。もうなんとか予想とかギリシャ文字だらけの文字列のどこが数学なんだといいたい。
初めの30分ほどで集中してレポートを終わらせる。
そしてここからが今日の本題。
問題の数学の課題に取り組む。早速2問目にしてすでに頭を悩ませる。これ単位とれるかなと不安になる。まだ前期、しかも一年生だぞ私。
教科書と課題とをにらめっこしてどうにかこうにか考えていると、隣にだれか座ってくる。誰もいないんだからとなりに来なくていいのにとちらっとみるとなんと座っていたのはあの青年だった。
その青年は隣に座って、体を少し、私のほうに向けて、話しかけてきた。
「どうしたの?ずっと書いたり消したりしてるみたいだけど」
突然話しかけられて、正直びっくりしているけど、そのまま素直に会話を続ける。
「ちょっと課題が難しくて…」
「僕に見せて?」
私は問題集を青年のほうに差し出す。
「この2番の問題です」
青年は問題をじっと見つめて、考えているようだった。
私はその整った横顔をみてみる。窓からさす日差しがすりガラスを通して、優しく青年の白くてきれいな髪を照らし、顔に柔らかい影を落とす。
思わず少し見とれてしまったが、気を取り直して私もその問題を考える。
そうしていると青年が1分くらい考えてから口を開く。
「紙とペンくれる?」
私がルーズリーフ一枚とペンを渡す。
青年はそこにすらすらと何かを書き出して、私にも見えるように2人の間に紙をおく。
「これは、このフーリエ変換の式を使って、これが…」
そしてその紙にメモを付け足しながら、私にもわかるくらい丁寧に教えてくれた。
その青年の説明はとてもわかりやすくて、私でも大体のことは理解できた。まあ、これをまた一人で解くのはまた難しいかもしれないけれど、いままでで一番分かった気がした。
青年の指導の下、次の問題は自分で考えながら解いてみた。
私が最後まで解けるのを見守ってくれる。
「ほら、できた」
そして私が最後の答えを書き終わるやすぐに微笑んでくれる。
「できました!ありがとうございます」
青年のほうを見てお礼をいうと青年はその優しい笑顔でこくんとうなずいて、そのままそこで自分の腕を枕にこっちを向いて寝始めた。まだ寝るのこの人。てか、ここで寝るの!?と思ったが、またすぐに寝息を立て始めた。すごくねむかったのかな。
わたしはそのまま青年の隣で静かに課題を進めることにした。
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