第3話 図書館
大学に入り、はや3か月。毎日蝉がなき、ニュースでは熱中症や暑さ対策のニュースばかりが流れる。
私はいまだに大学へ行く途中のあの古い図書館が気になっていた。今日もあの図書館の前を通って帰宅する。
町の普通の図書館はこの図書館とは別に存在していて、そちらは割と大きくて人もたくさん来ているようだった。アパートからは少し距離があるので、あまり行っていないが、以前一度立ち寄った際に見かけた町の図書館リストにもこの図書館は乗っていない。
なにより、今時スマホの地図アプリにも載っていない。
それだけを考えると不気味に感じるが、しっかりと手入れされた雰囲気をみるとつぶれたわけでもなさそうだった。
気になるけど入る勇気はない、でも気になるから大学の通学ルートは毎日この図書館の前を通るようになっていた。
8月に入り、最近は毎日溶けるように暑い日々を送っていた私だが、その日特に暑かった 。最高気温も36度で猛暑日。大学の授業も午前だけだったので、そのまま真昼間に家に向かって歩く。徒歩5分とはいえ、あせがだらだらに流れる。
いつものようにあの古びた図書館の前を通ると、なんと入口が開かれていた。
いつもは窓も扉も閉まっていて、中の様子がわからないのだけれど、なぜか今日は扉が開いていた。この3か月一度も扉があいているのは見たことない。
いつも朝も昼も夜もいつ通っても空いていたことなどないのに、なぜ空いているんだろう。
私は思わず立ち止まって、中をのぞく。
どうやら中は普通の図書館のようだった。普通の図書館と違いそうなのは、本が天井近くまで並べられていて、いたるところに梯子がある。さらには観賞用なのか、小さな木がいたるところに飾られていて、幻想的な雰囲気を放っていた。
まるで森の中の図書館だ。小鳥のさえずりさえ聞こえてきそうだ。
「すてき……」おもわず口からこぼれ出る。それに中からすずしい風が出てくる。クーラーが聞いているようだった。私は思わず、そちらに足を踏み出して、図書館の入り口をくぐった。
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