第51話ドラゴン
探索130日目。
昨日は自宅に戻った。商業ギルドに納品する商品を日本で購入するのか、と思ったら、社屋という名の倉庫に商品が山のようにあった。
久しぶりの日本でゆっくりしたかったのに、とんぼ返りした。
姫の手腕は凄い。先読みして手配するので効率が非常に良い。良過ぎる!俺を全く休ませる気が無い!!
スキルオーブは毎日5個使用している。
今日までに追加でスキルを45個取得した。商業ギルドから購入した残りは86個だ。
これだけ取得すると、ダブるスキルが多い。新規のスキルは半分ほどだ。
新規で取得出来たスキルは【剣術】、【拷問術】、【鎖鎌術】、【腹話術】、【危機察知能力上昇】、【味覚上昇】、【骨密度上昇】、【罠解除】、【拷問耐性】、【絶対音感】、【反響定位】、【軟体】、【挑発】、【整理整頓】、【猫耳愛】、【早食い】、【曲芸】、【振付】、【育毛】、【マッサージ】、【ショートスリーパー】、【ロブスター】、【ハンドパワー】
相変わらずハズレが多い。意味の解らないスキルも多数ある。スキルの件は神官に聞くしかないかな。
沢山のスキルを取得して、スキルについて解ってきた事もある。
俺が思い描いていた、魔法のようなスキルは存在しないようだ。実際、1つも取得出来ていない。
『炎や水を出すなんて無理よ。そのエネルギーや質量をどこから持ってくるの。魔素を代替えとして消費するにも、空気中の魔素は薄いのよ。移植実験した植物を考慮すれば、一昼夜かけて集めれば出来る可能性はあるけど現実的で無いわね。それに、魔物の1体から放出される魔素よりも多くの魔素を消費して魔物を倒すなんて正気の沙汰じゃないわ』
ダンジョンは魔素が減らないように魔物をリポップしているのに、魔素を消費しまくるスキルなんて作る訳ないよな。でも、ファンタジーの世界なんだからファイアボールとかウォーターアローとか使って見たかったな。
『ヨシオの妄想には付き合いきれないわ。ドラゴンを狩りに行くわよ』
「・・・」
魔法は妄想で、ドラゴンを倒すのは現実なのか。
俺が想像していたファンタジーとは乖離が酷過ぎてガッカリな件。 どっかに有りそうな本のタイトルだ。
「ギュルルルル!キュオオオオン!!」
山に近付いただけで、威嚇されてしまった。警戒されてるのに、もっと近づくとか怖いんですけど・・・
『ヨシオ、作戦通り、まず山を登ってドラゴンとの間合いを詰めるわよ』
山を登り始めると、ドラゴンは大岩を落として来た。大岩が斜面を転がって来ても、距離があると避けるのも簡単だ。
今の内に一気に登ろうとしたら、今度は頭上から大岩を落として来た。クレーンゲームのように真上からのピンポイント攻撃。足場がしっかりしていれば問題ないが、岩でできた斜面だと避けるのも一苦労だ。ドラゴンが岩を補給するために離脱した時を狙って登る。ドラゴンが岩を持って来たら逃げ回る。一進一退を繰り返してようやく頂上が見えて来た。
ドラゴンが岩を持ってないのを確認して一気に頂上へ向かって走り出すと、俺に向かって急降下してきたドラゴンが特大の炎を吹いた。化けキツネも似たような事をしていたが、炎のサイズは10倍以上ある。絶対に避け切れない。
『ヨシオ、今よ』
俺は姫の合図でアイテムボックスを出して中に飛び込んだ。
俺のアイテムボックスは、俺以外には見えないし干渉も出来ない。完全な安全地帯だ。ダブりまくったオーブのおかげで今では8m×8m×8mのサイズまで広がった。問題は、中がほぼ無重力なので体が浮いてしまう事と、いくら広くても密閉空間の為に酸欠の恐れがある事だ。だが最大の問題はアイテムボックス自体移動出来ないので攻撃は受けないが、俺も移動出来ない事だ。
『ヨシオ、少し角度が悪いけど、我慢するしかないわね。反撃よ!』
俺は街で購入した槍を握りしめて、ドラゴンに向かって投擲した。 ドラゴンは何も無い場所から飛んで来た槍に対応出来ず、羽根に穴を開けた。
『ヨシオ、ドンドン投げなさい』
購入したのは、槍だけではない。斧や剣など刃が付いているのもなら何でも買ってアイテムボックスに入れた。全ての武器屋で商品を買いまくったので、街に武器が無くなったらしいが金貨を還元していると思って買いまくった。金の力って素晴らしい!
投擲スキルの恩恵で高確率で命中していたが、流石に隠れている位置に気付いたようでドラゴンは見える所に現われなくなった。
『ヨシオ、第3段階よ』
「やっぱり移動は必要か」
一度安全地帯から出て、違う場所に安全地帯を出現させる。ただ、アイテムボックスから出た瞬間、真後ろにドラゴンが居たらゲームオーバーだ。
俺の心臓は高鳴り、緊張で手が汗ばんで来た。意を決して出ようとした時、アイテムボックスの出入口を塞がれた。
ドラゴンの足と尻尾の付根が目の前にある。俺は咄嗟にドラゴンの腹の下に潜り込み、アイテムボックスを解除。新たにドラゴンの右足の下にアイテムボックスを出現させて、ドラゴンをそっとさわる。その瞬間、ドラゴンの右足はアイテムボックスに落ちて行き、落とし穴にハマったドラゴンは身動きが取れなくなった。その様子を見る事も無く、俺はドラゴンの後方へ猛ダッシュする。
アイテムボックスは俺の意思で閉じないと消えないが、境界面に物が有ると閉じる事が出来ないので消す事も出来ない。だが、俺と一定の距離が開いたら強制的に閉じて消える。
右足を失ったドラゴンが大暴れをしている。俺は後方から近寄り、今度は尻尾をアイテムボックスに落としてダッシュする。
右足と尻尾を失ったドラゴンは飛んで逃げようとするがバランスが取れず飛び立てない。
『ヨシオ、第4段階よ。ダルマになるまで削りなさい』
「姫、その言い方じゃ俺が悪者みたいじゃないか」
ドラゴンから見れば、警告を無視した侵略者に一方的にヤラれるのだから酷い話しではある。 それを言ったら、ドラゴンに1人で戦うように算段を付けた姫の方が酷いのだが、今は考えないでおこう。
アイテムボックス攻撃を数回繰り返し、目の前には胴体と頭だけになったドラゴンがいる。頭はアイテムボックスに入れたくない。入れた瞬間に炎を吹かれたら、中の温度が下がるまで暫くアイテムボックスが使えなくなる。
「この状態でも生きてるって、どうなってるの? スコップでコツコツ攻撃するか」
それから暫くして、ドラゴンは黒い粒子になって霧散した。
黒い球を拾うと、頭の中に【クリア報酬としてダンジョンを発生させる】という内容が入って来た。
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