第47話ボス



 探索102日目。




 緑のキツネがいるダンジョンを進んで行く。今回の目的はボスの討伐なのでザコは出来るだけ無視して走る。


 5日間かけて取得した新たなスキルに転移や瞬間移動が出来るスキルは無かった。


 今回新たに取得したのは【回避能力上昇】、【隠密行動上昇】、【気配遮断】、【耐寒耐性】、【耐熱耐性】結構使えそうなスキルが多い。異世界の夜は寒いので耐寒は欲しかった。


 やはり、ハズレスキルの方が数は多い。【斧術】、【槍術】、【馬術】、【麻痺耐性】、【感電耐性】、【孤独耐性】、【精力制御】、【速読】、【握力上昇】、【作曲】、【ナンパ】斧とか槍とか使わないし、作曲とかナンパなんて使う機会が無い。


 ダブったスキルも多かった。【馬術】、【投擲能力上昇】、【回避能力上昇】、【隠密行動上昇】、【アイテムボックス】、【アイテムボックス】、【アイテムボックス】、【石化耐性】今回でアイテムボックスは5つ目になった。つまり4m×4m×4mのサイズだ。相当な量が入る。おかげで、対ボス装備やバッテリー各種も苦労せずに持ち運べるようになった。



 1日中走って移動するが、飽きるし疲れる。腹が減ったらキツネを狩ってドロップを食べる。イチゴがドロップした時だけはテンションが上がる。


 ピクニック気分でマラソンを続ける事、4日。2つ目の山脈の頂上に着いた。





 探索106日目。




 ボスが前回と同じ場所にいるなら、ここから数時間の場所だ。アイテムボックスから対ボス用の装備を取り出して準備を整えた。



「姫、作戦は考えてるのか?」



『スキルが使えるか試しましょう。隠密と気配遮断で後方から近付き、投擲で攻撃しましょう。奇襲に成功したら追い打ちをかけて、失敗したら一時撤退』



「じゃあ、見つからないように移動しよう」



『ヨシオ、忘れて無い?ここは平面の大地よ。地球なら4km離れたら地平線の下に隠れれるけど、平面の大地では隠れる場所が無いわ』



「ほふく前進の意味が無いのか。どうしたら良いんだ?」



『ドローンを出来るだけ高く飛ばして、ボスの頭の向きを確認して後方から近付くわよ』



 さすが姫だ。ファンタジー世界での戦い方も研究してるのか。


 姫が今回の為に用意した秘密兵器は多数ある。なかなか燃えない普通の服、なかなか燃えないリュック、耐火処理した傘、化学火災用の消火器。つまり、防御力は上がっても攻撃を全く考えてない。


 大丈夫か?と聞きたくなるような装備だが、先手が取れなければ逃げるので充分だろう。




 ボスの後方から、ゆっくり歩いて近付く。時々、緑のキツネが襲って来るが速攻で倒す。300m程の距離に近付いた。これ以上近くで緑のキツネが出てきたら、流石に気付かれる。



『ヨシオ、スコップを思いっきり投擲しなさい』



 え!この距離から、俺の唯一の武器を投げるのか。外れたら丸腰だ。


 投擲スキルはダンジョンに入って直ぐに確認した。軽く小石を投げるだけで200m先の的に当った。だか今回は300mだ。小石よりも重いスコップを投げる。


 俺は気合を入れ、全身を使って思いっきり投擲した。スコップが一直線に飛んで行くが、ボスが何かに気が付き耳が動いた。ボスの態勢が僅かにズレ、頭を俺の方に向けようとした瞬間、スコップが頭と胴体の間を通過した。頭だけがそのまま地面に落ち、遠くでスコップが地面を転がる音がした。



「今ので、倒せたのか?」



 俺が呆然としていると、ボスが黒い粒子になって消えていった。



「スキルって凄いな。何も出来ずに火だるまにされたのが嘘のようだ」



『ヨシオ、緑のキツネが居なくなったわけじゃないわ。スコップとドロップを早く回収しなさい』




 ボスがいた場所には、果物もスキルオーブも落ちてなかった。代わりに落ちてるのは、10cm程の真っ黒い球。 怪しい。 とても怪しい。 だがドロップ以外には考えられない。ドロップならイキなり爆発なんて事も無いだろう。意を決して触ってみる。


 スキルオーブのように、頭に何かが流れて来た。【ダンジョンクリア報酬として、俺の世界にダンジョンを発生させる】って、どういう事だよ! 神官の話と全く違うじゃねーか!


 俺が狼狽している間に、黒い球は砕けて消えていった。



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