第46話サービス
探索96日目。
気が付くと朝だった。
「姫、俺はどうしたんだ」
『8個目のスキルオーブを使用した直後に、気を失ったのよ』
「そうか・・・ どのくらい気を失ってたんだ」
『今は翌日の朝よ。スキルは取得出来ているの?』
「6個使用した所から気分が悪くなったからな。今後は5個までにしよう」
俺は今回取得したスキルを思い出していた。自分の中に意識を集中すると、現在取得しているスキルがなんとなくわかる。原理はいまだに良く解らない。
『ヨシオ、変な顔してないで、何を取得したのか教えないよ』
思わず顔がニマニマしていたのだろう。姫から催促された。【気配察知】と【体力回復上昇】はこれからの戦いの事を考えたら有用だ。
だが、相変わらずハズレも多い。【石化耐性】、【臭覚強化】、【速記】これらは、いつか使う時がくるのだろうか。
ダブッたスキルも有った。【アイテムボックス】、【投擲能力上昇】、【投擲能力上昇】投擲能力上昇は今回始めてだが2回出た。
だが、まだ瞬間移動は出てない。あるのかも不明だが。
「姫、他にどんなスキルが有るか知りたいけど、どこに行ったら調べられるかな」
『神殿の図書館なら、目的の本が所蔵されている可能性はあるわね』
神殿か。貴族街だからアポ無しでは行けないだろうな。
それより神官に会い辛い。姫から”人柱”と聞いて、どんな顔して会えば良いのか解らなくなった。
今回は諦めよう。そのうち、機会があるかもしれない。
「姫、直ぐにダンジョンに入るのか? キツネ狩りに出発する前に、商業ギルドに不在にする事を伝えた方が良く無いか?昨日発注された分の納品の件もあるし」
『ヨシオにしては気がまわるわね』
今回購入した装備等を荷造りして、商業ギルドへ向かう事にした。
ギルド長が険しい顔で問い詰めて来た。
「ヨシオ君、また暫くダンジョンへ入る気か。次の発注もあるのだが・・・」
昨日の納品もしてないのに、次の発注の心配をしてるのか。
「ヨシオ君専用の倉庫を用意する。ガンガン納品してくれ。納品が終わったら、好きなだけダンジョンに入ってくれ」
案内された倉庫は、思いの外大きかった。昨日の発注分を入れるだけなら2畳分の小屋で充分と思ったが、プレハブよりも大きい倉庫に案内された。
「ではヨシオ君、これが追加の注文だ。いつでも納品してくれ」
ギルド長から手渡された注文の内容を姫が翻訳してくれた。
『ヨシオ、最初に500万円で購入した残り全部でギリギリね』
マジか・・・10セット分なんて売れないと思っていたのに、もう売れた。でも運ぶのは俺なんだよな。何往復必要なんだろう。考えただけで気が滅入る。
探索101日目。
夕暮れの差し迫る頃、納品が終わりギルド長に報告をした。
「ヨシオ君、これで30日は大丈夫だ。暫くしたら、また来てくれ」
そういうとギルド長は急かされるように馬車に乗り込んで出発した。
「・・・あの量で30日分か。今後を考えると恐ろしいな」
『今回の商品は、そろそろ飽和する頃よ。次の商品を考えましょう』
『それよりも、ヨシオ。2日で出来る作業を5日もかけて、ゆっくり行ったのよ。もうリフレッシュ出来てるでしょ。明日からはダンジョンよ』
頑張れば、納品は2日で出来そうな気がした。だが、1日9往復、2日で18往復なんてしたくなかった。いや、あえてしなかったのだ。
理由はいくつかある。ギルド長に即日納品が出来るとは思われたくない、とか。たまには、日本で美味しい食事がしたい、とか。日本でお姉さんに色々と接待されるお店に行きたい、とか。暫く休んでないからダラダラしたい、とか。
一番の理由は、ダンジョンに入る前にスキルオーブを使用する為だ。残り24個を安全に取得するには5日必要だった。姫に説明したら渋々了承してくれたので、楽しい5日間になった。
当然、お姉さんがサービスしてくれるお店ではワザと携帯電話を車内に忘れて入店したが、店内でのあんな事やこんな事を姫は知っていた。店内に監視カメラは無いのに、どうやって知ったのか。姫に隠し事をする方法が思いつかない。
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