第44話質問だ



 探索94日目。




 体を洗い、服を着替えて、商業ギルドと冒険者ギルドに帰還の報告へ行く。



「姫、下着まで新品にしたけど、もう臭くないかな」



『ヨシオ、私に臭覚は有りません』



 商業ギルドでは、ギルド長が貴族街へ行ってるようで不在だった。代わりに手紙を渡された。手紙には「直ぐに納品してくれ」と書いてあった。俺は字が読めないので姫が通訳してくれた。


 どうやら商品不足で、貴族に謝りに行ってるらしい。巻き込まれるのも嫌なので「次は納品しに来ます」と言い、逃げるようにギルドを後にした。



「思った以上に売れてるようだ。今日にでも納品しないとギルド長が宿に来そうだ」



『今のヨシオなら、街からドアまで40分よ。直ぐに終わるわ』



 日本に商品を取りに行く前に、冒険者ギルドにも帰還の報告に行く。前回から20日が経過してる。忘れる前に報告しないと、死亡扱いされて登録を抹消される。


 冒険者ギルドに入ると、体脂肪率推定1%の女が酔っ払い2人を相手に大立ち回りをしていた。誰が見ても、酔っ払い2人をギルド長がイジメているようにしか見えない光景だ。



「ちょっと通して貰えませんか」



「おお、デカいの。取り調べの続きがしたいのか。今は手が離せんので後日だ」



「いや、遠慮する。それよりもダンジョンから戻った報告をしに来た」



「なら受付に言えば良い」



 その受付の前で暴れている、あんたに言われたくないな。



「ああ、良いかな。ダンジョンから戻った報告をしに来たのだが・・・って、オイッ」



 ギルド長を避けて受付嬢の所までたどり着き、報告しようとしたら受付嬢の目がハートマークになっていた。勿論、見つめている先は俺、ではなくギルド長だ。個人の趣味をどうこう言うつもりはないが、仕事しろよ!




『ヨシオ、報告が終わったなら商品を取りに行きましょう』



「以前、姫から聞いてたけど、本当に俺って嫌われてるんだな」



『信じてなかったのですか。嘘は言ってません』



「俺が信じたくなかっただけだろうな。まさかギルドの受付嬢に”まだ生きてたんですか”なんて言われるとは思って無かった」






 探索95日目。




 2日かけて、商業ギルド長の手紙通りに納品した。



「これで暫くは納品の仕事はないよな。何往復もするのは疲れる」



『そうだと良いわね』



 姫、そんな不吉な事言わないでくれ。


 宿に戻り、残った装備の点検をしていると、商業ギルドから呼び出しがあった。どうやら、スキルオーブが手に入ったようだ。




 商業ギルドの2階、ギルド長の部屋に入ると疲れ切ったオンスがいた。



「オーブの前に、これを」



 渡されたのは更に追加の注文だ。ただ、納品する場所がまだないので、納品は少し待って欲しいようだ。


 また、荷運びで自宅と異世界の街の往復だ。今回は何日かかるかな。



「こっちが、連絡したオーブだ」



 ギルド長が出してきたオーブは、なんと52個あった。



「よくも、こんなに集めたましたね」



「義務とはいえ、嫌々買っていた貴族も多かったのだ」



 貴族も良くこんなに不良在庫を持っていたな。そしてギルド長も、よくこんなに集めてきたな。



「ギルド長、1つ質問だが。52個全部一度に使っても平気だと思うか」



「そんな使い方、貴族でもした事が無いだろう」



 流石に頭が爆発するなんて事は無いとは思うが心配になる。今は、アイテムボックスに入れて持ち帰ろう。


 もっとスキルオーブを買いたい事を伝えて商業ギルドをあとにした。

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