第42話イチゴ
探索75日目。
準備万端でダンジョン探索だ。しかし、本当に籠る必要があるのかは疑問である。
「姫、本当に籠る必要があるの。目的とかあるの」
『ヨシオ、ボスが倒された後のダンジョンが、どう変化するか確かめたいでしょ』
「・・・。 あー。そーだなー。すげー気になるなー」
俺は、全く興味が無い。解った所で何になるのか。最悪ダンジョンが消えるかもしれない。その犯人になる方が怖い。
『山脈が見えるわ。まずは山の頂上に行きましょう』
俺の移動速度は、スキルを使って走ると時速20km以上だ。今日中には着くだろうな。
走り出して1分ほど。俺は盛大に転んだ。良く見ると果物が転がってる。緑のキツネにつまづいたようだ。
「姫、ヤバいな。スキル使ったら転ぶ」
『普通に移動しながら、緑のキツネを全滅させなさい。ついでに食料が手に入るわ』
戦いながら移動したら。山まで何日かかるか解らないぞ。
「姫、何時になった?」
『午後9時よ』
「今日は、もう休んで良いだろ」
探索は、なかなか進まない。入口から10km離れた辺りから、緑のキツネと遭遇する回数が増えた。5分歩いたら10匹出現。そんな状態が永遠に続く。
もうドロップは殆ど拾ってない。イチゴだけは結構美味しいので拾う。今は入口から50kmの距離だが、山が近付いたようには見えない。
10分ほど座って周りの様子を見ているが、緑のキツネは解らない。どうやら、こちらが動かないと襲って来ないようだ。これなら安心して寝られる。
探索79日目。
このダンジョンに入ってから5日目だ。 今、一番問題なのは、寝る時に明るすぎて寝つきが悪い事だ。
探索は1日に200km以上進めてる。3日目にスキルオーブがドロップした。取得したスキルが、俺的には大当たり。
【動体視力強化】だった。単体ではそこまで強力ではないが、俺は既に【移動能力上昇】を取得してる。もう、緑のキツネにつまづいて転ぶなんて事は無い。
緑のキツネを避けて走っても良いのだが、俺は全部を倒している。理由は2つ。スキルオーブとイチゴだ。
探索84日目。
このダンジョンに入ってから10日目だ。山脈は思ったよりも低かった。標高はたぶん500mから1000mだろう。
姫には『大地が平面だから』と言われたが、その説明では全く理解出来ないが「なるほど」と言っといた。
山脈から見下ろすと、向こう側にも同じような大地が続いてる。
「姫、やっぱり向こう側も探索するのか」
『当然よ。楽しみね』
何が楽しみなんだ。俺は帰り道の事を考えたら憂鬱になるぞ。
山脈を超えると、緑のキツネが一回り大きくなった。強さも増しているのだろう。1撃で倒せない時がある。特に大きな問題ではない。
今一番の問題は、52才のオッサンが10日間も風呂もシャワーも水浴びすらして無い事だ。色んな意味でヤバい。
探索86日目。
このダンジョンに入ってから12日目だ。俺は更に3つのスキルを得た。【跳躍力強化】と【毒耐性】と【移動能力上昇】だ。
【移動能力上昇】は2回目だ。スキルがダブった時は、スキル効果は更に伸びるようだ。今なら時速30kmで走り続けられそうだ。
すばしっこいと感じたていた緑のキツネだが、もうイチゴを奪われる事がなくなった。
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