第40話やっちまった



 俺と姫は、アイテムボックスの使い方を研究した。最初は手に持った物が異空間に瞬間移動するのをイメージしたが、何も起きない。


 試行錯誤した結果、不思議空間が現れた。姫には見えないらしいので、俺だけの空間のようだ。


 俺の目の前には横25cm高さ25cmの窓が見える。窓を開けると奥行が25cmある。当然、奥行も姫には見えないようだ。


 中は無重力のようで、中に入れると重さを感じなくなる。頭を入れてみたが呼吸も出来る。窓の中に手や頭を入れている時は、姫にはその部分が消えているように見えてるらしい。


 窓は閉めると消えるが、俺の意識の中には存在している。窓を出したいと意識をすれば、思い通りの高さ、角度で現れる。但し、手の届く範囲に限られた。


 試しに、姫を入れて窓を閉じてみた。1分ほどして取り出すと『ヨシオに初めてを奪われたわ』と言い出したので無視した。


 姫の見解は、高さ25cm幅25cm奥行25cmの無重力空間がドコかに存在しており、スキルはその空間につながる入口を作るだけ。一言で言えば”個人利用の極小ダンジョン”らしい。


 現象だけを見れば、たしかに俺にしか入れない極小ダンジョンだ。サイズも小さいし、なんかガッカリだ。



「なんか・・・想像と違う。俺の感動を返せ」



 俺が気落ちしていると、姫が色々と補足してくれた。


『手に持っている物が一瞬で消えたら、真空が出来て手が破壊されるわ』


『離れた場所に物を出現さたら、テレポートよ』


『無限に物が入ったら、惑星の質量が変わって世界が崩壊するわ』


 これは、姫なりの励ましなのかな。



 テレポートのスキルならワンチャン有るかも。今後に期待しておこう。




『ヨシオ、確認したい事がある』



 俺が立ち直れずに、うな垂れていると姫が改まって聞いて来た。



『ヨシオは異世界征服を目指してるから、生活基盤も異世界にするわよね』



 まだ覚えてたのか、確かにそんな事言ったな。



『異世界で生活するなら、もっと稼ぐ必要があるわ』



 金貨7千枚持ってるぞ。地球で購入した物資を全部売れば、金貨7万枚以上になる。それで足りないのか。



『ヨシオは、どこまで頑張れる?』



 不吉なことを言われた。絶対ヤバい事になる。正直、今の状態でギリギリだ。 52歳の肉体をなめるなよ!



「・・・これ以上はもう無理だから。勘弁して」



『良かったわ。今の状態をキープ出来るのね』



 やっちまった。言質取られた。”時すでに遅し”とは、こういう状態なのだろう。今程、時間を巻き戻せるスキルが欲しいと思った事はない。

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