第36話大丈夫か



 予想通り、到着したのはスワヒリ語のオッサン宅。



『ヨシオ、私が合図したら手荷物を渡して頂戴』



 予想通り、今回も俺は蚊帳の外らしい。


 手荷物にはドロップした2cmの立方体金属が全種類各1個入っている。それと封筒だ。中には日本円で100万円。手間賃という事で渡すようだ。




『ヨシオ、買い物をして戻るわよ』



 スワヒリ語のオッサンは、思いのほか早く終わった。後日結果を送って貰うようだ。



『残りの500万円、無駄遣いしてないでしょうネ』



 銀貨を売って得たお金だ。600万円の内、100万円は今スワヒリ語のオッサンに使った。



「姫、本当は使いたかったのに、使う時間なんて無かったぞ」



『商業ギルドの発注商品を買うのに、ギリギリね』



「ノート、コップ、ビー玉、パチンコ玉、どう考えても500万円なんて必要ないだろ」



『ヨシオ、何を言っているの。今回の分は44万円で揃うわ。それを10セット用意するのよ。追加で塩も買うわ』



 マジですか! 姫、そんなに売れるのか? 姫なら全部売りそうだ。そして運ぶのは全部俺だ・・・


 しかし、今回で日本円をほぼ使い果たす。もう何も買えない。貨幣を売って日本円を得る事は1度しかしないと言ってたから今後どうするつもりなんだ。




 買い物をして自宅へ到着。多過ぎて持ち帰り出来なかった分は、明日届けて貰う事にした。



「姫、荷物運びを始める前に、20日ぶりにトマトを見ていく」



『ヨシオ、20日ではなく21日よ』



 裏のトマト畑に行くと、食べごろのが8個あった。落ちて潰れたのが4個ある。これは見なかった事にしよう。


 トマト畑の隣に作った、実験用の畑は雑草が枯れたままだった。この実験は何の目的だったんだろうか。



「姫、雑草移植の実験は、何か解ったのか」



『解った事と、解らない事があるわ』



 姫でも、まだ解らない事があるようだ。



「何が解ったんだ」



『あの異世界の街はダンジョンの中よ』



 いきなり過ぎて、理解出来ない答えが返ってきた。



 姫の説明では、


 異世界の大気中には魔素が充満している。異世界の植物は魔素を栄養に育つ為、地球では魔素不足で枯れる。地球の植物は魔素が無くても育つが、魔素があると凄く育つ。どちらの植物も元々魔素を吸収する能力がある。


 塩を販売して流通させたが、人口と消費量を考えると全く足りていない。たぶん異世界人は魔素を吸収して、何かの電解質を体内で作って生きている。異世界の植物も異世界人も魔素を消費しまくっている。


 一方、ダンジョン内の動物が出す黒い粒子が高濃度の魔素と思われる。異世界にあった43個のダンジョンは魔素の発生が多く殆ど魔素を消費してない。


 魔素の循環と均衡を保つのが”ダンジョンシステム”と仮定した場合、ダンジョンの一つが極端に魔素不足になり魔物のリポップでは回復不可能になった。そこで、魔素が濃い世界との出入口を直接つなげて均衡を保とうとしている。



 まだ解らない事は2つ。地球はダンジョンでは無いがドアが出現した。ダンジョンシステムはドロップ品の質量をドコから得ているのか。



 姫の説明が正しいかは、俺の頭では解らない。だが俺は1つ気が付いてしまった。地球の植物も魔素を吸収して育つなら、俺も吸収してないか?


 俺・・・大丈夫か?


 姫の推論が間違ってる事を願います。



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