第35話 2つ



 探索65日目。




 あれから12日、毎日毎日松茸を狩り続けた。地球での”松茸狩り”とは全く異なる。スコップでモグラ叩きをするのだ。


「姫、飽きた」



『一度、地球に戻りましょう。全種類の金属サンプルとを持ちなさい』


 詳しく調べて貰うのだろう。またスワヒリ語のオッサンの所に行くのかな。




 12日間、松茸狩りの日々だったが他にも色々あった。


 商業ギルドに売る商品が決まった。商業ギルド側が折れて、高く買ってくれるのが決まったのだ。



 A4の大学ノート1冊、金貨1枚


 百均のガラスコップ1個 金貨8枚


 ガラスのビー玉1個 金貨6枚 


 パチンコ玉 15個 金貨1枚



 詳しい説明を聞くと、


 街では和紙に近い紙は作っているが品質にムラがあるらしい。大学ノートは紙質が良いので、公文書等の管理や保存に使うらしい。今回は3000冊の注文だ。


 ガラスコップは透明なガラスを作る技術が無く加工も難しいらしい。貴族用の贅沢品として販売が決定しているようだ。今回は200個の注文だ。


 ビー玉はガラスで完全な球体は不可能と信じられていた。芸術品以外にも研究用としても販売されるようだ。今回は300個の注文だ。


 パチンコ玉は、馬車等のベアリングに使うようだ。これは多少の技術提供も含んでいる。今回は15000個の注文だ。


 全部納品したら金貨7400枚だ。7億4千万円相当になる。一生遊んで暮らせそうだ。でも、全部俺が背負って運ぶのは変わらない。塩も追加納品が続いてるので、納品完了が何時になるか考えると気が重くなる。


 大学ノートは神殿での写本には使用しないようにも伝えた。羊皮紙や和紙に比べると耐久性が劣るからだ。勿論、姫情報だ。俺は全く知らなかった。



 当初、販売を考えていた商品で諦めた物もある。


 ボールペンは、日本でいう水性ペンが既に存在していた。インクもドロップ品を加工して作っており、インクだけを補充して使える優れものだ。


 マッチも諦めた。家庭の台所は魔石から直接熱エネルギーを取り出す装置を使ってるらしい。IHヒーターの魔石版だ。炎は必要ない。


 冒険者や商人の野営用にと考えたが、魔道具として100円ライターのような物が既にあるらしい。もう普及しているので売れないだろう。



 俺は、自転車を金貨1000枚で売る案を出したが、姫に否定された。


『貴族は自分の脚を使って移動なんてしない』


『一般市民には、金貨1枚でも高くて売れない』



 売っただけでは無い。結構な買い物もした。


 ポーションは、かなりの量を買い込んだ。ランク1を100本。ランク2を100本。ランク3は10本を注文した。合計で金貨210枚だ。高いが安全には変えられない。



 モグラ叩き一番の収穫は、スキルオーブがドロップしたのだ!直ぐに使おうとしたら、今回は姫に止められた。


 商業ギルドで売れるか確認した所、金貨100枚だった。ギルド経由で、順番に貴族達が持ち回りで購入してるらしい。


 スキルは取得するまで、何が取得できるか解らないらしい。貴族的は、福袋を買う感覚なのだろう。


 冒険者は充分な装備を買い揃えても余る程の大金を得る。一攫千金のチャンスだ。充分に稼いでる冒険者は売らずに自分で使う人もいるようだが、戦闘に役立つスキルを取得できる可能性は非常に低いので売る人が多いらしい。



 俺でも買えるのか聞いたら、買えるそうだ。貴族に販売する前に「横流しする」と言われた。


 貴族から恨まれたくないので断ろうとしたら「慈善事業、冒険者救済が目的で、欲しくて買ってる訳ではない」と説明された。それなら心置きなく買えるだろう。



 俺は宿に戻ってから、今回ドロップしたスキルオーブを使用した。


 俺は、地球人で唯一スキルを2つ取得したスキルホルダーになった。



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