第29話ワンチャン

 再び、ダンジョンへ入る。今回は、鉄で出来た上部がアーチ型になって両開きのドアだ。俺の勝手なイメージでは、中世ヨーロッパで薔薇園の入口に使われていそうな門の形をしている。


 選んだ理由は特に無い。



「姫、入るぞ」



『ヨシオ、2人組の女性が先に入ったの見て、ホイホイ付いて行くのは辞めなさい。チャンスなんて無いわよ』



「チョッと待て!俺は犯罪者じゃないぞ。変な下心なんてある訳ないだろ」



 ワンチャン有るかな。くらいの下心しかありません。




 中に入ると、異様な風景だった。横幅3m高さ3mの廊下が続いてる。ここも迷路になっているようだ。


 ただ、床も壁も天井も、真っ平な鉄板のような物で出来ている。天井や壁の一部が所々光っている。壁も床もつなぎ目が無い。鋲の跡も無い。こんなのどうやって作ったんだ。



「地球の技術でも作れなだろ。未来の宇宙船の中か?」



『違うわ。ダンジョンよ』



 その通りだ。不思議空間を一々考えても仕方が無いな。




 このダンジョンは、午前中に入ったダンジョンよりも、多くの敵と遭遇する。実に効率が良い。毎分1匹は狩っている。


 敵は、30cmの芋虫だ。異様な程、足が遅い。どんな攻撃をしてくるのか観察したが全く攻撃して来ない。スコップをサクッと刺すと黒い粒子に変わる。


 ドロップは2cm程の石ころ。赤、黒、青と色んな色の石がドロップする。ドロップ品が小さいのでガンガン狩り続けられる。



『ヨシオ、そろそろ夜になるわ。帰るわよ』



 時間を忘れて狩っていた。異世界の夜は寒い。暗くなる前に帰る事にした。


 因みに、入る時に見た2人組の女性は会えなかった。




 冒険者ギルドの買い取りカウンターで石ころを売却する。石ころは”魔石”というらしい。色によって多少値段が違う。全部の魔石を売却した。386個で銀貨4枚と銅貨8枚だった。


 4万800円相当の稼ぎだ。午前と合わせると、日給4万4千円相当だ。コンビニの給料とは雲泥の差だ。



 隣のカウンターを見ると、あの2人組の女性がいた。無事でよかった。芋虫相手にケガする方が難しいか。魔石を22個提出していた。


 え?たったそれだけなの? いくら女性でも2人でダンジョンに入って22個? 敵は何も出来ないで霧散する芋虫だぞ。



「姫、あの2人組22個しか売却してないけど、少なくないか」



『普通の人がマッピングしながらの探索なら多い方よ』



「でも、相手は芋虫だぞ」



『ヨシオは最強の武器があるから瞬殺だけど、普通なら10分くらい必要よ。2人ともかなりの手練れって事よ』



 そうなのか。簡単に狩れたから気にしてなかったけど、俺ってスゴいのか。姫のマッピングと、姫が選んだ最強のスコップを駆使する俺。


 ・・・深く考えるとミジメになるから止そう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る