第28話気に入った
俺は、大きく重厚なスライドドアに入る事にした。理由は特に無い。なんとなく体育館のドアに似てる。
中に入ると、まさに異空間。道幅は5mくらいで壁は石で出来てるようだ。天井の石が全体的に光ってるようで、中は割と明るい。
「姫、これ迷路になってないか」
『壁が勝手に動かない限り、迷う事は無いわ。進みましょう』
壁が勝手に動く事なんてあるのか?姫の心配が現実にならない事を祈ろう。
10分程歩いたが、何も現れない。他の冒険者とは4組会った。
「姫、冒険者以外に出会わない。どうしたら良い?」
『出入口に近くて、冒険者の密度が高いのよ。暫く全力で走れば良い』
走る事数分、最初の動物を発見した。発見というよりは、蹴り飛ばした。十字路の視覚から飛び出して来たのだ。俺はスキルで高速移動中の為、避け切れずに蹴ってしまった。黒い犬のような動物は数m転がり、黒い粒子になって霧散した。残ったのは丸くて赤い物。
手に取ると、街で買った事がある果物だった。見た目はリンゴに似ているが、味は牛乳というガッカリな果物だ。
『ドロップは果物ね。ヨシオの餌が増えて良かったわね』
以前にも同じ事を言われた気がする。
それからは、走っては蹴り、走っては蹴りの繰り返し。2時間後ドロップが持ち切れなくなった。
「姫、もう持てないから帰ろう」
『今、全部食べれば、また2時間狩れるわよ』
出会ったのは黒い犬のような動物だけだったがドロップは多種多様な果物が出た。共通して言えるのは、どれもガッカリする味で俺は食べたくない。という事。
ギルドに戻る途中、姫に聞いてみた。
「このドロップ品もギルド経由で、街の商店に並ぶのか? ドロップとドロップ以外の区別は出来るのだろうか」
『ヨシオ、何を言っているの。街で売られている食料の殆どはダンジョン産よ』
「え? 食料って農家が作ってるんじゃないのか」
『ヨシオ、街の中でも外でも畑を見た事ある? 街はドロップで成り立っているのよ』
だから、騒ぎを起こした怪しい俺でも冒険者登録が出来るのか。出来るだけ冒険者を増やさないと街が成り立たないからな。
冒険者ギルドでの買い取ってもらた。鉄貨が3枚と銅貨が2枚だった。往復の時間を合わせて、半日で3200円相当の稼ぎだ。冒険者稼業もなかなか厳しいようだ。
「姫、午後からは何かする事あるのか」
『ダンジョンよ。違うドアに入るわ』
どうやら、姫はダンジョンが気に入ったようだ。
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