第26話カツ丼
探索51日目。
装備が完成した。動物の皮や金属が使われている。この世界の美的感覚は良く解らないが、日本人100人に勇者と盗賊どちらに見えるかアンケートをとったら、全員が”盗賊”と答えるだろう。
『目立たなくて良いわ』と姫に言われたが、俺のような巨体が戦闘準備して街中を歩いている方が目立つと思う。
これから冒険者ギルドに向かう。ギルドで登録、受付しないとダンジョンには入れないらしい。
「ダンジョンがあるなんて、姫から聞いてないんだが」
『2日前に伝えたわよ』
「姫が最初にダンジョンの事を知ったのは何時なんだ」
『ヨシオがスキルホルダーに進化した日ね』
2週間前じゃねぇか! あの日は白い何かを大量に売って街で買い物をした。街中の声を聴いて知ったのか。
姫は全てを通訳する事はない。俺に必要な会話だけを通訳する。群衆のザワザワした声は訳さない。訳されても俺が聞き取れないから訳さないのだろう。
「そうか。で、2週間も教えなかった理由はなんだ」
『聞かれなかったからよ』
「・・・」
冒険者ギルドに入り、受付カウンターに向かう。受付の女性に声をかけようとした時、俺を見て泣き出した。
「なんでだ!」
俺は何もしてないぞ。俺が知らない異世界のルールでもあるのか? 次の瞬間、周りにいた冒険者達から剣を向けられた。
「なんでだ!!」
俺は何もしてないぞ。何もしてないのが悪いのか?他のギルド職員は右往左往して、ギルドの中は大混乱だ。
そして今、俺はカツ丼が食べたい気分である。
「・・・帰って良いかな」
「ダメに決まってるだろ」
俺は今、取り調べを受けている。目の前には冒険者ギルド長と名乗る女性がいる。女性だが体脂肪率は1%以下だろう。どこをどう鍛えたら、こんな体になれるのか教えて貰いたい。
この世界の取り調べはキツい。飲まず食わずで軟禁状態。眠る事も許されない。これ本当に取り調べか?俺的には拷問だと思うが。
夜には解放された。
「シャバの空気はうまいな」
泣き出した受付嬢が、俺を庇ってくれて誤解が解けた。新人の彼女は、突然目の前にフル装備の巨人が出現してパニクったらしい。巨人が受付嬢を傷付けた。と勘違いした冒険者達が俺を討伐しようとした。酷い話しだ。
『ヨシオ、無事にギルド登録出来たわね。明日からダンジョンに行くわ』
「どこが無事だ。丸一日軟禁されたんだぞ」
『予想通りよ。解放が早くて驚いたくらいね』
姫、予想出来たなら先に教えてくれても良いだろ!
この世界では、”疑わしきは罰する”のが通例らしい。
俺は異世界でも常識を知らない件。 どっかに有りそうな本のタイトルだ。
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