第25話ダンジョン



 探索45日目。




 昨日、お試しで500gの塩を売った時、姫の予想通り追加注文を受けた。


 今日はこれから2kgの納品だ。塩は100g金貨1枚で売れた。金貨1枚は10万円相当だ。とんでもない金額だ。ボロ儲けで笑いが止まらない。



 宿は一番良い部屋をとった。日本で言えばスイートルームだ。1泊で金貨1枚だ。


 ただ、高級宿とは言っても異世界人クオリティなのだ。廊下は歩くと頭を天井にブツける。部屋の入口は60度お辞儀をしないと頭をブツける。部屋の中も中腰で歩かないと頭をブツける。膝から下は完全にベッドから出てしまう。トイレについては・・・考えたくもない。


 ベッドだけは今後どうにかして貰いたい。



 街の散策はまだ終わらない。屋台で買い食いしながら歩いてるのも理由の1つだが、この街どんだけ大きいんだ?



『ヨシオ、早くギルドに行かないと、散策の時間が減るわ』



「姫、この街って、どのくらいの大きさなんだ?」



『壁は長径12km短径10kmの楕円形をしてるわ。一部、立入禁止区画もあるわ』



 思っていたより大きい街だった。地図が完成するには、数日必要な気がする。






 探索46日目。




 探索中に冒険者ギルドを見つけた。中に入ろうとしたら、姫に止められた。



『奇妙な服を着て、大金持った人が入る場所ではない』と言われた。その通りだ。気を付けよう。



 散策していて気が付いた事もある。この街は思ったよりも治安が良い。酔っ払いが喧嘩してるのは良く見るが、その程度だ。ただ、朝も昼も酔っ払いがアチコチにいる。夜は寒いので俺は出歩かないから解らないが、たぶん酔っ払いだらけだろうな。



 娼館らしき店もあったが、姫が通訳をしてくれない。トコトン話し合いが必要なようだ。






 探索47日目。




 今日も塩を納品する。今回も2kgだ。



 昨晩、姫が通訳を放棄した件をトコトン話し合った。姫の論理武装は強かった。俺の如何なる武器も通用しない。最後には「携帯電話を壊すぞ」と脅したが、『日本に帰れなくなるだけよ』と言われた。


 姫無しに、ドアまで辿り着くのは不可能だ。今は金貨が沢山あるが使い切ったら俺の人生も終了する。俺は、娼館を諦めた。



「姫、街の地図完成の予定はいつ頃になる」



『商店が集まている区画は90%終了してるわ。あと2日あれば地図作りは終了ね』



「今後の予定は何かあるのか」



『出来れば今日中に、ヨシオの装備を注文するわ。奇妙な服装でいるよりも現地の装備を着ている方がマシだから』



「日本刀みたいな、カッコイイ武器も欲しいな」



『何を言っているの。ヨシオの武器は地球製スコップ一択よ』






 探索49日目。




 今日も塩を納品する。今回も2kgだ。これで6.5kg売った事になる。金貨65枚の売上。650万円相当になる。ボロ儲けだ。



 宿代が結構高いし、注文した装備の代金は金貨30枚だ。入る金額も大きいが出て行く金額も大きい。塩以外にも商売を始めた方が良いかもしれない。



「姫、地図作りはそろそろ終わるだろ。塩以外の商売も始めよう」



『そうね。ヨシオの装備が出来たらダンジョンに行きましょう』



 姫がサラっと爆弾発言をした。ダンジョン?だと? この世界にあるのか?異世界だから有ってもおかしくはないが。


 俺、聞いてないんだけど。

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