第24話当然



 探索39日目。




「姫、俺は一晩寝ながら考えて、生まれ変わった」



『ヨシオは寝て起きただけです』



「今までの俺は、弱かった」



『気付くのが遅いです』



「俺は自分の為に生きる」



『今までと同じですね』



「俺は過去を振り返らないで生きる」



『今までと同じですね』



「俺は異世界を征服する」



『中二病を発症するには40年遅いです』




 俺は気持ち良く宣言した。自分自身に言い聞かせる、決意表明だ。もう後悔するような生き方はしない。俺は、我がままに生きる。



 カッコ良く宣言はしたものの、やる事は決まっている。これから数日かけて、荷運びだ。


 ソーラーパネルを始めとする発電装置を拠点に設置する。俺が運べて、俺でも管理出来るのが太陽光発電しかなかった。設置には2日は必要だろう。


 その後は、塩を始めとする物資を拠点に持って行く。これも2日は必要だろう。



 これが完了したら、基本的に異世界の街で生活できる。2日に1度、拠点でバッテリーを交換し、使用済みバッテリーを2日かけて充電させる。ドローンを多用した場合は、発電量が間に合わないので日本に帰る必要がある。


 この先の予定が見えてきた。異世界での生活が待ち遠しい。






 探索44日目。




 昨日でやっと荷運びが終わった。ドアから拠点まで毎日4往復した。因みに、ドアから拠点までは16kmだ。毎日128km走った。120km走るのを回避したハズが、何の因果だろう。



『今日は最初に”銀シルバー買取専門店”に行きます』



「銀貨1200枚の代金だ。いくらになるのか楽しみだ」



『およそ600万円よ。受け取ったら直ぐに戻って異世界に行きます』



 俺は、我がままに生きると決めたんだ。金があるなら少しくらいは日本で遊びたい。美味しい物も食べたい。



「姫、今日1日くらい日本でゆっくりしても良いだろ」



『異世界征服を諦めるなら良いわよ』



 痛い所を突かれた。姫は優秀だ。俺のイヤがる所を的確に突いてくる。




 ”銀シルバー買取専門店”で受け取った金額は、姫の言う通り600万円だった。当然、美味しい食事もお預けだ。



 異世界へ出発の準備をする。今回異世界の街に行ったら、暫くは日本に戻らないので家の中を点検して回る。



『街に着いたら最初に、塩を売ります。まずは500gだけです』



「後ろ盾がないのに、塩を売っても良いのか?」



『ヨシオ、後ろ盾は作ったわ。ファオヴォアジャオを大量に納品したでしょ。あれは貴族や富裕層が購入するのよ。購入した物は次の納品を期待してヨシオを守る側に付くわ』



「だからあんなに売ったのか。でも街に塩を10kg持って行くのに売らないなら邪魔にならないか」



『直ぐに追加注文されると思うので、問題ありません』



「なるほど。商業ギルドに金貨の在庫が無くても困るから、小出しにするのか」



『その後は、商業ギルドに安全で高級な宿を紹介して貰います』



「宿を決めてから、街の散策か。インゴット関係の店が見つかると良いな」



『もし見つからない時は、商業ギルドで聞くわ』



「だったら最初から聞けば良い」



『聞いても聞かなくても、全部の店を確認するのは変わらないわ』



「ん、、、もしかして街の地図を作ってる?」



『当然でしょ』



 相変わらず、姫がハイスペックで助かる。

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