第23話ダークサイド
「・・・姫、今日の予定は、各種支払いと買い出しで良いのか」
『そうね。ポーションランク2を1本持って出発よ』
ポーション持って買い物か。何を考えてるのか全く解らない。
姫の道案内で車を走らせる。1時間ほどのドライブで到着した。
『着いたわよ。降りなさい』
「姫、ここは病院だぞ。買い物は行かないのか」
『買い物の前に、1つ用事を片付けるわ』
「まさか、入院患者にこっそりとポーションを飲ませて、地球人に効果が有るか確かめるのか」
『無断でそんな事したら犯罪よ』
相変わらず、俺以外には倫理サブルーチンが働くようだ。
『ヨシオ、インカムを付けて。エレベーターで3階に向かうわ。326号室を探して』
なんか、デジャヴ。スワヒリ語のオッサンを思い出す。あの時、俺は居ない者として扱われたよな。
326号室は、ここか。
「あ! 店長! なんで居るんですか」
「なんで、と言われても。入院したから病院に居るんだが」
驚いて、かける言葉を間違えた。姫、知ってたなら先に教えてくれよ。俺がバカみたいじゃないか。
「どこが悪いんですか?」
「閉店した店舗を片付けてたら、腰をヤッチャッて」
そりゃあ、90才がする仕事じゃ無い。
『ヨシオ、ポーション使うかどうかは、ヨシオの判断に任せるわ』
悪魔のささやきがインカムから聞こえて来た。
人体実験を店長でするのか?店長は90才超えてるんだぞ。もしもの事が有ったらどうする。逆に考えれば、何か有っても病院だから少しは安心か。子供に使うより、老い先短い人で実験する方が論理的には正しいか。
でも、店長は俺の恩人だ。人体実験なんて・・・
病院を出て買い物へ向かう途中、姫から声がかかった。
『ヨシオ、店長の退院が明日に決まったわ。良かったわね』
「病院のシステムに侵入して確認したのか。イヤ、答えなくて良い」
この日、姫に言われるがまま、大量に買い物をした。だが、俺は何を買ったのかも覚えてない。
俺の気分は最悪だ。出口のないトンネルをグルグル回っているようだ。
姫の倫理サブルーチンは働いている。だから姫は俺に判断させた。
姫が倫理上問題ないと判断たなら『飲ませなさい』と言ったハズだ。
そう言わなかったのは、飲ませる事が倫理に反してると判断したからだ。
俺はそこまで理解した上で、飲ませた。自分の意思で倫理に反する事を行ったって事だ。
姫はそうなる事が解っていて、俺を誘導した。倫理に反する行動の抜け道を見つけたって事だ。
なんだんだよ。
マジで。
この日、
姫も、
俺も、
ダークサイドに落ちた。
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