第22話計算
探索38日目。
朝だ。朝だ。待ちに待った朝だ。今日は俺の通帳に2千万円振り込まれる日だ。銀行の営業開始時間が待ちどうしい。
『ヨシオ、昨日移植した草を見に行くわよ』
今日の俺の足取りは軽い。もうすぐ金持ちになれる。ルンルンだ。
それも裏の畑に着くまでだった。
『ヨシオ、移植した時に水は与えてた?』
「姫も見てただろ。キチンと与えたぞ」
トマト畑の隣に移植した雑草は、枯れていた。
「姫、もう一度移植を試してみるか?」
『今は必要無いわ。異世界の畑も見に行くわよ』
俺は早朝のルンルンが噓のように消えた足取りで、異世界へ向かう。
「なんじゃこりゃあ」
昨日、10cmくらいの雑草を自宅の庭から抜いて異世界に植えた。それが翌日には高さ1m程に成長していた。
『ヨシオ、もう良いわ。邪魔だから抜いて。異世界にそんなの置いておけないから持ち帰るわよ』
こんなの地球に持ち帰って良いのか?持ち帰った上で枯らすしかないか。
実験で解った事は、異世界の植物を地球に移植したら、枯れる。地球の植物を異世界に移植したら、巨大になる。姫はもっと詳しい事が解ったのかな。
「姫、今回の実験で何か解ったの?」
『まだ確証は無いけど、実験結果には満足してるわ』
「そうか。何か解ったら教えてくれ」
姫は、枯れたり巨大化するのを予想してたのか。何を調べる為の実験だったのだろう。
今日の朝食は、白い何かの肉と家庭菜園のトマトだ。現金が無いので贅沢は出来ない。
「良し!振り込まれた! 昨日まで残高937円だった通帳が、今では8桁になってる!」
2千万円には少し届かなかったが充分である。これで今日は美味しいご飯が食べれる。姫を信じて頑張って来て良かった。
『ヨシオ、税金の事忘れて無いわよネ』
税金か。忘れてた。でも税金払っても、結構残るだろ。こんだけ有るんだから!
「姫、税金ってどのくらいかな」
『ヨシオ、必要なお金は税金だけじゃないのよ。電気代を始めとするライフラインを維持する費用は絶対に必要』
「電気水道とかは1年分でも、それほどの金額にはならないだろ」
『異世界で充分に発電出来るシステムを購入する。勿論ヨシオが運べて、ヨシオが管理出来る商品は限られるわ』
「姫にとっては生命線だから、安過ぎても困るのは解かる」
『塩を始めとする、異世界用の戦略物資を購入するわ』
「塩を売って、ガッポリ儲けたい」
『それらを除いた残り、ヨシオが自由に使える金額は約94万円になるわ』
「・・・」
計算間違ってない? 2千万が94万になるの? なんかガッカリだ。異世界で結構苦労したのにな。
94万って2千万に比べるとショボく感じるけど、最初に投資したのは42万だから2倍以上に増えてる。でも、なんか納得出来ない!
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