第21話畑仕事

「天気と水の事は良いとして、白い何かについては?」



『森には果実も木の実も無いわ。リス等小動物には生き難い場所よ。可能性としては、鹿のような草食動物が考えられるけど、ファオヴォアジャオがいる限り無理ね』



「白い何かは動く物全てに体当たりするだろ。バッテリーパックが1撃で壊れる程凄い衝撃だった。俺も最初の頃は結構ヤバかった」



『問題は、5日間ファオヴォアジャオを狩り続けたのに全く数が減らない事よ』



 言われてみれば、日を追うごとに狩る数が減るのが普通だ。5日間、毎日50匹以上狩れる訳がない。



「つまり、どういう事だ?」



『ファオヴォアジャオは、動物では無い。って事よ』



「そりゃあ、黒い粒子になって霧散するような動物は見た事ないけど、異世界的には普通の現象だと思ってた」



『たぶん、ファオヴォアジャオは、リポップしてるわ』



 ハイスペックな姫が、ファンタジーが起きてると認めた。



「・・・姫、そんな簡単にゲームみたいな事が起こってるって決めつけて良いの?」



『確認の方法は有るわ。ファオヴォアジャオのリポップする瞬間を確認出来れば良いけど、まず無理ね。代案もあるけど、それにはファオヴォアジャオ以外の動物を森の中で探す必要があるわ』



「結構な面積を探索したけど、見つからなかったぞ」



『だから手始めに森の大きさを知る事から始めるのよ』



「ああ、、、それで3時間走って、ドローンを飛ばす。って言い出したのか」



 話がつながった。最初っから、姫の手の上で踊らされてた。姫は携帯電話だから手は付いて無いんだけど。はぁ。走る準備しよう・・・




 俺が着替えて探索の準備をしていると



『ヨシオに一般常識を教えてたら、走る時間が無くなったわ。スコップ持ってトマト畑に行って』



 と言われた。俺の努力は、今、ここに、報われた!



 それにしても、トマト畑に何かあるのか?姫がハイスペック過ぎて、何をしようとしているのか全く解らない。聞いた所で俺には理解出来ないだろうから、聞かない。いつか俺もハイスペックになりたい。



『ヨシオ、トマト畑の隣に、1m四方の新しい畑を作って』



 姫は家庭菜園に目覚めたようだ。異世界探索に飽きたのだろうか。とりあえず、言われたようにスコップで耕そう。



『ヨシオ、耕す前に雑草を抜きなさい。そんな事も知らずに家庭菜園をしてたの?』



「・・・」 言い返す言葉が見つからない。




 雑草を抜き、耕し、畑の表面を平らに均す。



『出来たようネ。まだ植えないわよ。次はドアを通って森に行きます』



「異世界と地球の両方で家庭菜園をする気か?」



『私が家庭菜園をする訳ないでしょ。実験の場所を作ってるだけよ』



「森にも同じ広さの畑を作るのか」



『解ってるなら、早く作業を始めなさい』



「・・・はい」



 俺は家庭菜園でトマトを育てるから、姫には俺に対しての優しさを育てて欲しい。




『こっちも完成したようね』



 久しぶりの畑仕事は結構キツい。特に草取りする道具が無いのは大変だ。



『ヨシオ、その辺の雑草を一握り、根っこから抜いて。土を落としたら、トマト畑の隣に持って行くわよ』



 なんとなく、姫がしたい事が解った。異世界の植物が地球で育つのか。逆に地球の植物が異世界で育つのか。移植するのが雑草なら、万が一の事故があっても”未確認外来植物発見”で、済みそうだ。


 いや、無理かな・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る