第19話無理



 地球産だらか旨いのか、自分で育てたから旨いのか。トマトが旨ければ、どっちでも良いか。



「姫、今日これからの予定は何かあるの?」



『後日でも良かったけど、森の大きさを確認する』



「いつもの探索とは違うのか」



『街とは逆の方角に、真っすぐ3時間程走って、そこからドローンを飛ばす』



 聞き捨てならない。3時間も森を走らせるつもりなのか。帰りも3時間走らないと今日中に帰って来れないだろ。俺は時速20kmで走るんだそ。往復で120km走らせるつもりか!


 無理無理無理無理、勘弁してくれ。



「あ・・・ それ、後日でも良いなら、、、聞きたい事が有るんだ」



『走りたくなくて話を変えようとしてるなら、答えないわよ』



 さすが姫だ。俺の思考パターンを完全に理解してる。たとえバレていても、絶対に走りたくない。



「昨日、街で言ってた事だ。俺が目立つ理由が身長以外に有るのか」



『教えても良いけど、対応策なんて無いわよ』



「それでも、一応知りたい」



 明日には2千万円が手に入るんだ。金の力で何とか出来るかもしれない。               



『身長以外には、3つしか無いわ』



 身長以外に3つも有るのか! 俺、目立ちまくってるじゃないか。



「・・・順番に一つずつ説明して」



『1つ目はメガネとインカムね。あの街では誰も使って無かったわ』



 インカムは仕方がない。これが無いと会話が出来ない。姫による双方向同時通訳には絶対不可欠だ。


 あとメガネか。コンタクトは持ってないし、一度も使った事が無い。今更コンタクトにする気も無い。これは金の力では解決できない。



『2つ目は、人種が違う。異世界人はホリが深い顔で肌の色が少し黒い』



 確かに、白人のようにホリは深かった。 今更、美容整形なんてする気は無い。これは諦めるしかない。



「肌の色は、日焼けしてるだけだと思ったが、違うのか」



『老若男女問わず黒かったわ。書類仕事が中心のギルド長も黒かったわ』



 確かに、ギルド長も黒かった。あの人はアウトドアと無縁な感じだった。



「日焼けサロンに通ってみるか」



『近くの街には無いわ。一番近い店舗は、車で片道2時間30分の場所よ』



 さすが、姫だ。半分冗談のつもりで言ったのに、もう調べてあった。



「遠いな。頻繁には通えない」



 日焼けサロンは定期的に通わないと、直ぐに肌の色が戻ると聞いた事がある。異世界に行かないなら通う時間は出来るが、それでは本末転倒だ。



『3つ目は服装ね。日本の服とは素材からして違うわ』



 デザイン以前の問題か。化学繊維が作れそうにも思えなかったな。



「それは、向こうの街で買えば良いだろ。服を売ってる店も有った」



『殆どが古着屋よ。ヨシオのサイズは売ってない』



 異世界人の身長は130cm前後だ。170cmの俺では着れない。



「オーダーメイドで新品を注文する事は出来るだろ」



『採寸しないで作る方法があるなら、作りしましょう』



「裸を見せる趣味は無いが、採寸くらい恥ずかしくないぞ」



『もし、服で隠れている部位に種族的特徴が有ったらどうするの』



 顔が地球人に似てるから全身も同じだと思ってた。服で隠れている部位も地球人と同じとは限らないよな。実は、背中にタテガミが付いてるとか。実は、臍が無いとか。


 姫の言う通りだ。金の力が有っても、なに一つ解決できない。

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