第16話オンス



 商業ギルドの受付で買い取りの相談だ。全部買ってくれると良いのだが、少々量が多い。



「すみませ-ん。先日売った肉を、また持って来たんですが買取出来ますか?」



「え? 先日の肉って。 もしかしてファオヴォアジャオですか?」



 そんな名前だったか。長くて覚えてない。覚えれないのではなく、あえて覚えてないだけだ。



「はい。結構あるので、どこに出したら良いですか?」



「・・・少々お待ちください」




 待つ事数分、2階の奥の部屋に通された。



「良く来てくれた。私はギルド長のオンスだ」



 部屋には、見るからに”金持ちです”と主張している服を着た、趣味の悪いオッサンがいた。



「俺はヨシオだ。よろしく」



「早速見せて欲しい。いくつ有るんだ?」



 俺がテーブルの上に並べて行くと、段々とオンスの顔色が変わっていった。260個全部並べ終わると、オンスは部屋の入口に誰かを呼んで話を始めた。




「ヨシオ君。ファオヴォアジャオの肉は、1個金貨2枚で買取を行っている」



「はい。知ってます」



「大変言い難いのだが、現在買取出来るのは金貨500枚分だ」



「つまり、現金の用意が無い。という事ですか?」



「その通りだ。そこで提案なのだが、250個をギルドで買い取り、残りの10個を私個人が買うのはどうだろう?」



「同じ金額で買って貰えるなら、それで良いです」



「ありがとう。それでは直ぐに支払いを用意する。1階の受付前で待っていてくれ」



『ヨシオ、もう一つ確認する事があるわよ』



 退室しようとした時、姫が俺だけにささやいた。



「ああ。あと、もう一つだけ確認、いや、お願いしたい事が有って」



「お願い、とは。どのような事でしょうか」



「今後も色々な商品を売りたいと思っていますが、私はあまり目立ちたくない。私から購入している事は内密にして貰えると嬉しいのだが出来ますか?」



「私も商人だ。仕入れ元は他言せんし、ヨシオ君がドコから商品を仕入れているかも詮索しない。商人はと秘密を守りお金を稼ぐ者の事。中には情報を売る者もいるがそれは邪道、言葉だけで稼ぐなら吟遊詩人と同じで商人とは言えん」



「それは良かった。今後も良い取引が出来そうです」




「姫、どう思う?ギルド長は信用できそうか」



『言っている事は正しいわ。信用出来なければ売り先を変えるだけよ』



「サッパリしてるな。あと金貨の事も言ってただろ。ギルドに金貨500枚しか現金が無いなって変じゃないか」



『ヨシオが来る前に、何か重要な商品を大量に購入した可能性もあるわ』



 なるほど、その可能性はあるな。白い何かの肉が全部売れたから良いか。




 暫く待っていると支払いの用意が出来た。と受付に呼ばれた。


 受付に用意されていたのは、金貨370枚、銀貨1300枚、それとは別に金貨20枚だった。



「姫、日本に直ぐ戻るの?」



『この街で購入する物が有るので、戻るのは夕方よ』



「金貨と銀貨も重たいたいから、荷物が増えても困るんだが」



『安心しなさい。帰る途中、拠点に満タンのバッテリーを置いて帰ります』



「街から拠点までは、荷物が沢山って事か」



『不満ならヨシオ用の餌は買わないわ、飢え死にしなさい』



「荷物持ちって楽しいなあ。スキルも有るから超頑張れる!」

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